掲題の今朝の朝日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
組織的な裏金づくりの実態を解明しないまま、形ばかりの処分を急いでも、政治的なけじめをつけたことにはならない。自民党安倍派の元会長で、政界引退後も派閥運営に影響力をふるった森喜朗元首相からの聴取は不可欠だ。
岸田首相が自ら、安倍派幹部の塩谷立、下村博文、世耕弘成、西村康稔各氏への再聴取を行った。いったん廃止を決めたパーティー券収入の還流が復活した
過程で、森氏が影響力を持っていた可能性が浮上した。
首相はきのうの参院予算委員会で、調査が継続中であることを理由に、聞き取った内容を明らかにすることを拒んだ。疑いがある以上、究明を尽くし、事実関係を公にしなければならない。
そもそも、誰がいつ何のために裏金づくりを始めたのかが、不明のままだ。森氏が会長時代との見方もあるだけに、森氏にただすことなく、全容は把握できないはずだ。
一方、政権内ではすでに、再聴取の対象となった4人の処分案が語られている。党規律規約が定める8段階の処分のうち、最も厳しい「除名」や次の「離党勧告」は避け、3番目に重い「党員資格停止」か、その次の「選挙における非公認」だという。
新型コロナの緊急事態宣言下で銀座のクラブ通いをしていた3人の国会議員に対する処分は「離党勧告」だった。刑事事件としては、会計責任者らの訴追にとどまったとはいえ、党のみならず、政治全体への信頼を失墜させた政治責任の重さを考えると、均衡を欠いている。
党内で波風を立てたくないとの内向きの論理では、国民の理解は到底得られまい。
処分される前に先手を打ってのことだろうが、二階派トップの二階俊博元幹事長が今週初め、記者会見を開き、次の衆院選への不出馬を表明した。派閥の会計責任者と自身の秘書が立件された政治責任を明らかにするためと述べたが、最低限の説明責任がいまだ果たされていないことを忘れるわけにはいかない。
政治倫理審査会には、派閥の事務総長を代わりに立てた。会見も、同席した林幹雄元幹事長代理が答えることが多く、それも10分で打ち切られた。高齢が不出馬の理由かと尋ねた記者に「ばかやろう」という一幕もあった。
本心からの反省とは、とても受け取れない。二階氏自身の政治資金収支報告書への不記載額は、自民の現職議員で最多の3526万円にのぼる。これで処分を免れるようなことになれば、「厳正」にはほど遠いというほかない。