掲題の今朝の日経社説。
かなり説得的。
バブル期には敵対的買収が盛んになりがち。
しかし、高い株価が常に正しいとは限らない。
マイナス金利が解除されたとはいえ、
カネ余りの日本経済では大幅円安に加えて、
史上最高値を連日のように更新する
日経平均株価のメルトアップ現象が続いている。
バブルで歪んだ株価によって、
敵対的な買収が活発化すれば、
経済資源(資本や労働等)の
効率的配分が損なわれかねない。
つまりは、資産バブルは、
実体経済の資源配分の非効率という
無視できない歪みを助長しかねない。
この意味で、ミクロの企業買収問題は、
バブル沸騰中にあって、
マクロ経済政策の失敗から
大きく悪影響されてきていると見ざるを得まい。
いずれにしても、ご参考まで。
自社の競争力を高めるために、相手企業の経営陣が同意しなくてもM&A(合併・買収)を提案する。ほんの少し前まで「敵対的」として敬遠された戦略が、当たり前のことになりつつある。買収する側とされる側、双方の株主利益を重視したM&Aが日本の産業界に根づいてほしい。
配送業務を手がけるAZ-COM丸和ホールディングスは21日、同業のC&Fロジホールディングスに買収を提案した。過去に経営統合を持ちかけたが難色を示されていた。今回はC&F取締役会との協議と並行して、5月上旬にTOB(株式公開買い付け)を始めると発表した。
こうした企業買収は、事を荒立てるのを避ける日本の経営風土では限定的だった。しかし、昨年7月のニデックによる工作機械メーカーTAKISAWAへの買収提案や、第一生命ホールディングスの福利厚生代行ベネフィット・ワンへのTOBなど、先方の同意を得る前にM&Aを表明する手法が目立っている。
もちろん相手企業の同意を得るべく協議を重ねるのだが、合意前に買収の価格や相乗効果などを示すことにより、株主に直接はたらきかける狙いがある。株主が賛同すれば、経営陣もそれを尊重せざるをえない。株主利益を第一に考えるM&Aが増えれば、産業の再編が進み、資本市場も活性化すると期待される。
「同意なき買収」の提案が広がる背景には、経済産業省が企業買収指針をつくったり、東京証券取引所が株主重視の経営を促したりしたことがある。制度や環境は整ってきた。今後は企業が成長戦略としてのM&Aをさらに活用していってほしい。買収の実務を重ね、人や組織の経験値を上げていくことが重要だ。
M&Aで重視されるべき株主利益とは、買収される側だけでなく、買収する企業の株主も対象にしたものである。
相手の意向を顧みず高値で株式を買い取っても、買収後にうまく経営できるかどうか疑わしい。人材や取引先が離散すれば競争力の向上につながらず、買った企業の株主も不利益を被る。
企業買収の世界では「どんな愚か者でもお金を出せば会社は買える」との戒めもある。重要なのは買った後の経営だ。「同意なき買収」が定着しつつある今、あらためて確認したい。