掲題の今朝の日経社説。
問題なしとしない。
賃金と物価の好循環ではなく、
それらの間の悪循環が既に過去2年間ほど続いてきている。
また、日本以外のG7先進国では
賃金と物価の悪循環の恐れこそが懸念されてきている。
賃上げと物価の好循環ではなく、
それらの間の悪循環に陥りやすいのが欧米の経済学では常識なのだ。
一方で、約1割に過ぎない大手企業や大手労組の賃上げを称揚して、
他方で、過去30年間達成できなかった
「構造改革」をいまさら唱えてみても、
日本経済は長期内需停滞から抜け出せないことは不可避。
むしろ、「アベ友ら」による
(パーテイー券等で)利権をむさぼる
恣意的で非効率な産業政策を助長するだけだ。
いずれにしても、遺憾ながら、岸田政権と植田日銀体制は、
所詮、アベノミクスの三番煎じに過ぎない。
①異次元金融緩和、
②機動的な財政政策、そして
③成長戦略という
元祖アベノミクスの3本の矢は既に全て破綻している。
それは安倍派を中心とした政治とカネの不祥事で明らかではないか。
しかも、経済のカネ余り現象も
もはや倫理弛緩(モラルハザード)に陥りつつある。
異次元金融緩和の際限なき継続に伴って、今や、
インフレ調整後の実質ベースでみた金利水準
(長短金利全般にわたるイールドカーブ全体)を
マイナス圏へ深く沈めたままでは、
大幅な円安と株式や不動産等の
資産バブルが沸騰するのは火を見るよりも明らかだったのだ。
可及的速やかに、マイナス政策金利を解除することをはじめとして、
金融政策の政策正常化を粛々と実施していかなければ、
さらなるインフレ高進と資産バブルの増幅は
もはや制御不能に陥っているのかもしれない。
ところで、アベノミクスには
①消費税率の8%への恒久的引き上げ(2014年4月)、
②同10%への恒久的引き上げ(2019年10月)という
二つの足枷がある。
したがって、二つの足枷の結果としての
現行の消費税率10%に加えて
2022年以降に急台頭してきているインフレ税との間の
ダブルパンチ(正確には両者の掛け算部分を加えた
トリプルパンチ)によって、
日本経済の約6割を占める個人消費は不振にあえぎ続けている。
インフレ高進とバブル増幅の中で、
金融政策の正常化と同時に、
消費税撤廃に向けた消費税率の5%への
恒久的な引き下げを実施しなければ、
日本は政治と経済の戦後最大の危機の中で、
制御不能に陥り、
約80年前の戦前のように、
いたずらに自滅の道を早めるのかもしれない。
これらの意味で、同社説をはじめとする
我が国の主要メデイアは遺憾ながら、
歴史から少しも学んでいないと言わざるを得ない。
賃金と物価の好循環に向けた一歩は踏み出せたと言えよう。春の労使交渉は13日に主要企業の回答があり、賃上げで満額回答が続出した。数十年ぶりの高水準という企業も目立つ。
個人消費を上向かせ、日本経済を成長軌道に乗せるには、賃上げの安定した継続が欠かせない。来年以降を見据え、企業も政府も構造改革を進める必要がある。
日立製作所はベースアップ(ベア)に相当する賃金改善で月1万3000円の満額回答を出した。昨年の7000円を上回り、現行の要求方式となった1998年以降で最高だ。定期昇給を含めると5.5%の賃上げとなる。その他の電機や自動車、重工でも満額回答が相次ぎ、日本製鉄は労働組合の要求を上回る回答を出した。
平均賃上げ率は連合が集計した昨年実績の3.58%を上回り、4%超えを予測する声もある。ベアの大幅な引き上げで、実質賃金のプラス転換へ弾みがつく。
日銀は賃上げ動向をマイナス金利政策の解除に向けた大きなポイントとしており、詰めの情勢分析に入る見通しだ。
経団連など経営側が積極的な賃上げを呼びかけ、高水準の回答はある程度予想されていた。重要なのは来年以降の持続力だ。
賃上げの理由では人材確保を挙げる企業が多い。人口減で人手不足は一層深刻になる。企業は賃上げ原資を生み出すために、労働生産性の向上と収益構造の見直しを急ぐべきだ。不採算部門の売却や事業の組み替えなど、遅れていた構造改革を加速する必要がある。
成長戦略も欠かせない。値下げよりも付加価値で競い合い、有望な事業に思い切った投資をすべきだ。コスト削減に偏重した路線から転換し、欧米企業のように人的投資でイノベーションを生み出す経営に踏み出してほしい。
政府は13日、経済界や労働団体のトップと意見交換する政労使会議を開き、中小企業との取引慣行の是正を求めた。賃上げを広く産業界に波及させるためにも、大手は労務費などの適正な価格転嫁に応じる必要がある。
政府にも産業の新陳代謝を促し、成長分野への労働移動を強く後押しする政策を求めたい。企業の構造改革が進めば人員削減の動きが広がる可能性もある。安全網を整備しながら、賃金上昇を伴う転職がしやすい労働市場の改革を急ぐべきだ。