オスカー2作が示す邦画の力 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

ご参考まで。

 

邦画の力を改めて示した2作品同時のオスカー受賞である。

 

第96回米アカデミー賞で、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞、山崎貴監督の「ゴジラ―1.0(マイナスワン)」が視覚効果賞に輝いた。栄誉をたたえたい。

 

「君たちは」は宮崎監督が引退宣言を撤回し、7年かけて作り上げた。デジタル全盛の時代にあって手描きの繊細な表現にこだわり、主人公の少年の内面世界を丁寧に描き出した。宮崎監督は2003年の「千と千尋の神隠し」、14年の名誉賞に続く3度目のオスカーとなった。

 

「ゴジラ」は終戦前後の日本が舞台。破壊される銀座などを緻密なCGで再現するとともに、立ち向かう復員兵らのヒューマンドラマを描く。ハリウッドなら巨額の費用をかけるビジュアルエフェクト(VFX)を、低予算で実現したことが話題となった。

 

いずれも制作者のアイデアや技術の工夫、センスに光があたった受賞であろう。長年磨きをかけてきた日本のソフトパワーが世界水準にあることは疑いがない。これからも優れた作品が後に続くことを期待したい。

 

他方で産業としての日本の映画界には課題も指摘される。資金が十分でないのに品質や制作本数への要求が高まり、若手スタッフは厳しい労働環境に置かれている。一部の著名クリエーター、定番のアニメシリーズが高い興行成績を残す半面、ミニシアターの衰退もあって作品の多様性がかつてより失われたとの声も根強い。

 

独自作品を投入するネットフリックスなどの配信サービスとの競合もある。配信の拡大で劇場客が減る影響に加え、クリエーターの争奪戦も起きているという。

 

コンテンツ産業は人材が最大の資源である。政府は日本発コンテンツを成長のエンジンに位置づける。お隣の韓国の急成長など国際競争も激しさを増す。スピード感と実効性を伴った支援策を打ちだしていきたい。