再対決の大統領選が米国の閉塞感を映す | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

 

もっとも、閉塞感では、米国よりも

我が日本国のほうが厳しいと見るべきだろう。

 

ご参考まで。

 

 

深まる国内の分断に身動きがとれず、政治が問題の解決に役割を果たせていない。今回の大統領選は米国の閉塞感を投影した展開となっている。内向きの対立が先鋭化し、民主主義の盟主としての米国の威信を傷つける選挙戦にならないか心配が尽きない。

 

それを象徴するのが共和党候補選びだ。序盤の天王山スーパーチューズデーでトランプ前大統領が圧勝し、党の指名獲得をほぼ確実にした。11月の大統領選は2020年に続き、民主党のバイデン大統領との再対決となる公算が大きい。ただ、米国内には2人の再戦を見たくないと答えた割合が3分の2にのぼる世論調査もある。

 

90を超える罪で起訴され、指導者の適格性を問われている人物がなぜ支持を集めるのか。

 

「バイデン氏が検察当局を使い、政敵である自分を追い落とそうとしている」と起訴を逆手にとったトランプ氏の主張が共和党の岩盤支持層の結集に役立った面がある。荒唐無稽な言い分が浸透してしまう背景に、米社会の分断があるのは間違いない。その土壌となっている経済格差はなお大きく、しつこいインフレが多くの国民の暮らしを苦しめている。

 

処方箋を示すべき政治は機能不全ぶりをさらしている。ウクライナ支援をはじめ国益にかかわる政策は与野党対立で前に進まず、格差是正に向けてバイデン政権が掲げた富裕層や大企業への増税構想も宙に浮いたままだ。

 

米ピュー・リサーチ・センターによると、連邦政府への信頼度は歴史的な低水準にある。トランプ氏はこんな既存政治への不満をすくい取り、ヘイリー元国連大使らライバルを寄せ付けなかった。

 

もっとも、本選の勝利には弱点とされてきた無党派層の取り込みが要る。選挙と並行して進む裁判で有罪判決を受ければ、穏健な共和党支持層も離反しかねない。

 

高齢のバイデン氏を擁する民主党に熱気は乏しい。中東危機への対応に反発する若者ら支持基盤が崩れる兆しがあり、前回成功したように「反トランプ」の層を再び糾合できるかは心もとない。

 

米政治の混乱に乗じて不穏な動きを強める国が出る恐れもある。日本は誰が大統領になるかにかかわらず備えを万全にすべきだ。防衛力の向上や欧州など同志国との連携強化といった努力は当然だ。トランプ氏再登板をにらんだ人脈の再構築も怠らないでほしい。