掲題の今朝の日経社説。
一理あるが問題なしとしない。
第一に、2023年10~12月期GDPの実質経済成長率は
前期比で2期連続のマイナスとなり、
米国流に言えばテクニカルな
リセッション(景気後退)に陥ったことになる。
しかも、2023年10~12月期GDPデフレーターは
前年同期比で+3.8%の上昇を記録し、
7~9月期の同5.2%上昇からは減速したものの、
日本経済は明らかにインフレである。
つまり、日本経済は2期連続でインフレとリセッションの併存という
スタグフレーションに陥ったことが今回GDPの最大の特徴である。
第二に、重要なのは、筆者がかねてから主張してきたように、
民間主導の持続的経済成長に不可欠な
消費と投資という双発エンジンがなんと3期連続で前期比で縮小したこと。
サミュエルソンの古典的な乗数と
加速度係数モデル(昨年11月マンスリー)で見たように、
10%消費税率とインフレ税の高まりによって
個人の可処分所得が低下して、
消費と投資が悪循環に陥ることで、
マイナス経済成長とならざるをえないことは
経済理論と乗数と加速度係数モデルの応用が示す通り。
第三に、したがって、インフレ下では、まずもって、
インフレを安定化させるために、
政策金利を引き上げて、実質政策金利がプラスに転じるように、
金融政策の正常化を段階的に粛々と進めることが必須となる。
それなしに、「物価高に負けない賃上げを!」等と強弁して、
本来、政策変数ではない賃上げを求めても、
物価安定と持続的な経済成長の達成などは不可能であることは自明。
最後に、インフレ下での日銀のマイナス政策金利の維持を筆頭とする
金融政策正常化の遅れが現下の資産バブル沸騰を招く
最大の原因だと見ざるを得まい。
これらの意味で、日経社説は問題なしとしない。
日本経済は内需主導の成長軌道に乗り切れず、足踏みを続けている。2023年10〜12月期の実質経済成長率は前期比で2四半期連続のマイナスとなった。
企業収益は堅調なのに、物価高や資材高のあおりで個人消費や設備投資になかなか波及しない。人手不足も投資を抑えつける。企業は積極的な賃上げや事業の効率化を着実に進め、息の長い内需の復調へとつなげてほしい。
内閣府が15日発表した実質国内総生産(GDP)の速報値は季節調整済みの前期比の年率換算で0.4%減った。市場予想は1.0%前後のプラスだった。
実質GDPの落ち込みは7〜9月期の3.3%減からは縮小したが、2期以上連続でのマイナス成長は18年の後半以来だ。名目は1.2%増とプラスに転じたものの、物価高の圧力が弱まりつつも残り、実質ではマイナスが続いた。
内需の停滞が目立つ。個人消費と設備投資はともに3期連続で減った。消費は長引く物価高で人々の節約志向が根強い。企業の設備投資は各種調査では強気の計画を保つが、資材高や人材不足で遅れが出る例も多いとみられる。
焦点は堅調な企業収益を内需にどう結びつけるかだ。今年の春季労使交渉では昨年以上の賃上げを予想する声も多い。人々が「物価超えの所得増」を確信し、消費意欲を高められるかがカギを握る。
人手不足が成長の足かせになる影響も見逃せない。企業は業務の効率化に加え、一人一人の技能向上を強力に支援すべきだ。労働力が生産性の高い分野へと移りやすくなるよう労働市場の改革や企業再編を促す仕組みも欠かせない。
23年通年でみた名目GDPは過去最高を更新し、600兆円の大台まで8兆円あまりに迫った。実質GDPは前年比1.9%増と、内閣府が推計する潜在成長率の0.7%を大きく上回った。
一方で23年のドル建ての名目GDPはドイツに抜かれ、世界4位に後退した。円安でドル換算値が目減りしたためだが、長期の経済停滞が影響した面も否定できない。経済の構造改革を通じ、生産性を高める契機とすべきだ。
日銀は賃金と物価の好循環をにらみつつ、マイナス金利政策の解除の機を探る。賃金や消費の動向に加え、設備投資の遅れが続くうちに企業が計画自体を縮小させないか、歴史的な政策判断を前に丹念な情勢分析に努めてほしい。