野党は責任ある政策提案を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

立憲民主党大会で泉代表は「次期衆院選で政権交代をなし遂げよう」と訴えた(4日、東京都港区)

掲題の今朝の日経社説。

あきれた同社説との批判を免れまい。

 

現下の「政治とカネ」の不祥事と、

「カネ余り」を増幅する日銀の金融政策で、

生活費高騰の危機を招き、

戦後最大の政治経済の危機を招いているのは、

他ならむ与党自民党と公明党によるものだ。

 

例えば、主として、10%という高消費税率と

インフレ税の高まりというダブル・パンチで、

一般国民を収奪・搾取する世襲化・特権化が著しい

「上級国民」の大代表であるのは、

与党自民党そのものではないか。

 

果てしない異次元の双子の金融と財政刺激政策によって、

無責任体質に陥っているのは野党ではなく、

与党にあることは論を待つまい。

 

もっとも、野党も政策を一段と磨くことで、

①消費税撤廃に向けた5%への恒久的消費税率引き下げ、

②金融政策の正常化、

③利権につながる悪しき産業政策の撤廃という、

新しい3本の矢を放つことに向けて、

これからが正念場であることは間違いない。

 

しかし、だからといって、

現下の戦後最大の政治経済危機を招いているのは、

野党ではなく、与党にあることは自明であり、

これらの意味で、同社説は問題外とさえ酷評されかねまい。

 

 

 

立憲民主党が4日に党大会を開き、次期衆院選で「自民党を超える第1党となる」との活動計画を採択した。自民党の裏金問題への有権者の視線は厳しい。だが野党が本気で政権奪取を狙うのなら、責任ある政策提案を通じて支持の拡大をめざすのが前提だろう。

 

立民は自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて①政治資金パーティーや企業・団体献金の全面禁止②議員に会計責任者と連帯して責任を負わせる「連座制」の導入――などを求めている。企業・団体献金の禁止や連座制の導入は、日本維新の会や共産党なども主張している。

 

立民の泉健太代表は野党連携をめぐり「ミッション型内閣」を提唱する。政治改革や教育の無償化など各党が賛同できる共通政策を掲げて選挙に勝ち、政権交代を実現する構想だ。

 

自民、公明両党が2012年に政権復帰して以降、旧民主党勢力は離合集散を繰り返した。国会対応は「政策提案型」か「政権対決型」かで行きつ戻りつし、選挙戦術でも共産党との距離感をめぐる内向きの論争を続けてきた。

 

安倍晋三政権では「森友・加計両学園」や「桜を見る会」などの疑惑や不祥事が明るみに出た。しかし与党への不満が政権交代に結びつく展開にはならなかった。野党は与党の揚げ足取りに終始し、政権を任せるのは不安だとの有権者の根強い意識がうかがえる。

 

野党各党は今国会で優先すべき政策課題として、教育無償化や児童手当の増額、物価高対策の拡充などを主張している。財源に関しては所得税の累進性の強化、金融所得課税の改革などに触れているものの、建設的な対案と評価されるには至っていない。

 

能登半島地震の対応や「政治とカネ」問題の検証は野党として重要な役割だ。同時に給付増と負担減に軸足を置く旧来型の政策提案はもはや限界だと自覚すべきだ。経済運営や外交・安全保障を含む骨太の戦略を示し、政権との対立軸を明確にしてもらいたい。