SBI証券処分 公正守る責任自覚せよ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

 

 掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 証券会社には、市場の「門番」として公正さや透明性を守る役割がある。ネット証券の最大手が自ら取引をゆがめる行為を主導していたのでは、健全な株式市場は望めない。再発防止の徹底と経営責任の明確化が必要だ。

 

 SBI証券が、企業の新規株式公開で株価を操作したとして、金融庁から一部業務停止命令を受けた。主幹事を務めた企業3社の株式公開で、上場後の最初の取引でつく株価が事前の「公開価格」を下回らないよう、投資家に頼んで買い注文を出させ、受け付けて執行したという。

 

 結果として、市場では実勢より高く株を買わされた投資家がいた可能性がある。金融商品取引法は、証券会社が、こうした作為的な相場になるのを知りながら注文を受け付けることを禁じている。

 

 今回SBI証券は、不適切な注文を受け付けただけでなく、その注文を自ら投資家に頼んでおり、悪質性が高い。常務取締役の関与の下で執行役員から指示が出されており、組織性も明白だ。

 

 SBI証券は、株式売買手数料などの引き下げで顧客を急速に増やし、口座開設数はグループ合計で1100万件に達するという。一方、手数料収入の減少を補うため「代替収益の強化を徹底推進」するとして、法人業務に力を入れてきた。新規公開の引き受けもその一つだ。

 

 個人投資家に対しても、新規上場銘柄の取り扱いの多さを売りの一つにしていた。営業を優先して法令順守をないがしろにしていなかったか、十分に省みる必要がある。

 

 持ち株会社SBIホールディングスも責任を免れない。SBI証券は中核会社で、グループトップの北尾吉孝氏が代表取締役会長を務める。

 

 グループでは、21年6月に別の子会社が金融庁から業務停止命令を受けたが、北尾氏は直前に「僕は(グループの)300社以上の全部を細かくみるわけにはいかない」とも発言していた。今回の不正は同時期に起きている。中核会社ですら細かくみられなかったのだとすれば、統治の不全は深刻だ。

 

 グループは、SBI新生銀行を傘下に持つ銀行持ち株会社や保険会社を有し、多数の地方銀行に出資を広げる。社会的責任の自覚なしには、公共性の高い金融事業を担う資格もない。「正しい倫理的価値観を持つ」とうたう経営理念とはかけ離れた現状を直視しなければならない。

 

 金融庁の姿勢も問われる。SBIの今後の取り組みを十分に監視し、適切な監督に努めるべきだ。