習近平政権は経済を軽視しているのか | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

経済低迷に対する習近平政権の動きは鈍い(2023年11月、米サンフランシスコで)=ロイター

掲題の今朝の日経社説。

一理あろうが、問題なしとしない。

 

中国経済も日本経済も国家資本主義で民間主体の市場経済を重視していない。

その結果は、両経済ともに、個人消費と企業設備投資の不振という悪循環に陥っている。

 

中国経済はデフレ色が強まっているものの、

日本経済では高インフレで特に食品価格高騰で生活費高騰の危機に直面している。

 

それでも、いまだに金融政策と財政政策の過度の刺激策で総需要を刺激して、

インフレと資産バブルの増幅のリスクを軽視している。

 

習近平がデフレ的な経済を軽視していることは間違いないが、

岸田政権もインフレ経済を軽視していることで、

ベクトルこそ違えども、本質的に変わりない。

 

同社説は中国経済とともに我が国経済にも

厳しい注文を付きつけなければ公平とはいえまい。

 

 

 

一党体制の強化ばかりに力を注ぎ、苦境にある経済の立て直しは二の次と考えているのではないか。中国の習近平政権に対して、そんな疑念をぬぐえない。

 

中国の国家統計局が17日に発表した2023年の国内総生産(GDP)は、実質で前年に比べ5.2%増えた。

 

よほど「経済の好調」をアピールしたかったのだろう。李強首相は16日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、発表前にもかかわらず「23年の成長率は5.2%前後に達し、政府目標の『5%前後』を上回った」と明らかにした。

 

実態は数字より悪いとみるべきだ。22年は新型コロナウイルスを抑え込む都市封鎖の影響で、経済が深刻な打撃を受けた。その反動を考えれば、23年の景気は勢いを欠いたといわざるを得ない。

 

景気が低迷している最大の要因は、不動産業の不振を起点とする需要不足だ。住宅が売れず、家具や家電に加え、自動車やスマートフォンといった耐久消費財の販売が全般にふるわない。

 

厳しい雇用情勢が消費意欲をそぐ。特に若者の就職難は切実だ。

 

23年6月分を最後に止めていた年齢層別の失業率の公表を突然再開し、16〜24歳は12月時点で14.9%だったと明らかにした。以前は含んでいた就職活動中の学生などを除いており、継続性を欠く。政府統計への不信は尽きない。

 

需要不足から、デフレ圧力も高まっている。23年の消費者物価指数(CPI)は前年比0.2%の上昇にとどまった。世界金融危機のあおりでマイナスを記録した09年以来、14年ぶりの低い伸びだ。その結果、名目でみたGDP成長率は23年に物価変動の影響を除いた実質を8年ぶりに下回った。

 

本格的なデフレを避けるには、足りない需要を財政で穴埋めする必要がある。23年の出生数が7年連続で前年を下回り、人口減への対応も急務だ。しかし、習政権の動きは鈍い。

 

台湾の総統選挙では「一つの中国」を認めない民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が勝利した。統一を掲げる習政権は台湾への圧力を強める構えをみせる。

 

台湾海峡の緊張が高まれば、経済を立て直す余裕はなくなる。中国の需要不足は世界経済にも大きな影響を及ぼす。世界2位の経済大国として、習政権には

その自覚を持ってもらいたい。