掲題の昨日の日経社説。
問題なしとしない。
日本の出生者数が年間70~80万程度で推移する限り、
長期的に人口の半減傾向は不可避だ。
いつまでも的の外れた議論を繰り返しても無益だ。
シカゴ大学の故ベッカー教授(ノーベル経済学賞受賞者)が
いみじくも「多産の経済学」で指摘したように、
生涯にわたる可処分所得の大幅な引き上げなしに、
子供が増える見込みはないと断定しても過言ではあるまい。
消費税率の5%への恒久的な引き下げによって、
全ての個人や家計にとっての(インフレ調整後の)
実質生涯可処分所得を大幅に引き上げることを
第一歩にして消費税撤廃に向けて可及的速やかに踏み出せば、
日本経済とその人口は持続的に成長できる。
同社説は意味のない議論を繰り返えすばかりで、
逆に、消費税率の大幅引き上げさえも提言しているではないか。
同社説は自己矛盾をいつまで糊塗し続けるのだろうか。
岸田文雄政権は問題提起をしっかり受け止め、すみやかに行動に移すべきだろう。民間有志による人口戦略会議が公表した人口危機に関する提言のことである。
三村明夫・前日本商工会議所会頭を議長とする同会議には、経済界、労働界、学識者などの有志28人が参加。人口減が進むなかで持続可能な社会をつくるための提言をまとめ、2100年を見据えた長期的な国家戦略の策定と推進を首相に求めた。
人口動態の基調が変わらない限り、1億2400万人いる日本の人口は2100年には6300万人に半減すると推計されている。あまりにも急激な人口減少に直面する社会や経済、地域がはたして持続可能なのか、多くの国民が不安を抱いているはずだ。
ところが今の日本は危機に正面から向き合っていない。人口危機への対策を総合的に議論する場すら政府や国会に存在しないのだ。
人口が急激かつ止めどなく減り続けると、社会や経済はひたすら縮小と撤退を強いられる。高齢化率が4割で高止まりする超高齢社会が続き、格差と対立が深刻化。インフラやサービスの機能停止で地方社会は消滅の危機に陥る。
提言はこうした縮小と停滞を避けるため、人口減のペースを緩和させ、8000万人の規模で安定させる必要性を訴えた。
外国人労働者の受け入れは高技能者に絞りつつ、経済全体の生産性を高める改革によって、2050〜2100年に年率0.9%程度の実質国内総生産(GDP)成長率を維持する想定だ。
実現するには60年までに合計特殊出生率が2.07に到達する必要がある。そのためには40年ごろまでに出生率が1.6、50年ごろまでに1.8に上昇することが望ましいと分析している。
出生率1.26の日本にとって容易ではないが、決して不可能ではないはずだ。政府は提言も参考に戦略をつくってほしい。子どもを持つかは個人の選択であり、目標が独り歩きして出産を強要するような風潮が生まれないようにするのは当然のことだ。
人口危機に立ち向かう戦略は政官民が問題意識を共有して、長期間にわたって粘り強く推進する必要がある。政府は戦略の立案・推進体制を整え、国会議員は政争の具とせずに超党派で法制化するべきだ。民間や地域も含め、国民的な議論を深めるときだ。