【米国市況】S&P500は小幅高、週間では連騰ストップ-ドル乱高下 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝のブルーンバーグ記事。
ご参考まで。
 
Cristin Flanagan

  • S&P500種株価指数、週間では1.5%安-前週まで9週連続で上昇

  • ドルは対円で一時145円97銭に上昇、その後144円を割り込む場面も

5日の米株式相場は小幅高で終了。経済指標が相次ぎ発表される中、日中は方向感に欠ける動きが続いた。国債相場とドルも朝方発表の12月雇用統計などに敏感に反応し、荒い値動きとなった。

株式 終値 前営業日比 変化率
S&P500種株価指数 4697.24 8.56 0.18%
ダウ工業株30種平均 37466.11 25.77 0.07%
ナスダック総合指数 14524.07 13.77 0.09%

 

  S&P500種株価指数は前週まで9週連続で上昇していたが、今年最初の週は週間ベースで1.5%下落した。週間下落率としては昨年10月下旬以来の大きさ。

 

  ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのトム・リー氏は「2024年最初の4営業日は株式市場にとって散々なスタートになった」と指摘。「1月の相場はその年の行方を映す傾向にある。つまり、取引初週のこの混乱は、厳しい1年を覚悟せよと我々に告げているのだ」とリポートに記した。

 

  同氏は2023年の米株上昇を予想していた数少ない市場関係者の1人で、今年も下期の相場上昇をなお見込んでいる。

Rough Start | S&P 500 snaps nine-week bull run in first trading days of 2024

 

 

 

  昨年12月の米雇用統計では雇用者数の伸びが加速し、賃金の上昇率は市場予想を上回った。これを受けて市場では3月利下げの観測が後退し、株式相場の押し上げ材料になった。ただ、その後に発表された米供給管理協会(ISM)の非製造業総合景況指数でサービス業の減速が示されると株式相場の勢いは失速した。

 

  リッチモンド連銀のバーキン総裁は、労働市場は弱まっているのではなく、正常化しているのであって、安定した軟化パターンを見せていると指摘。今年のFOMCで議決権を持つバーキン総裁は「インフレが目標に低下する説得力のある道筋をたどっているとの確信と自信が高まるにつれ、金利を通常の水準に戻すことに概念的に異論はない」と記者団に述べた。

  イエレン米財務長官は、米経済がソフトランディングを達成したと指摘。CNNとのインタビューで「今見られる状況はソフトランディングと表現できると考える。これが続くことを期待している」とし、「労働市場と景気、インフレがたどってきた軌道は、同当局による一連の決定が適切だったことを示唆している」と続けた。

国債

  米国債相場は雇用統計やISM非製造業景況指数の発表を受けて乱高下。ただ、トレーダーは米金融当局が2024年に大幅な利下げを行うとの見方は堅持している。

 

  連邦公開市場委員会(FOMC)会合の日程に連動したスワップ契約では、雇用統計の発表直後には利下げの織り込み具合が後退。しかし、そうした動きはISM統計発表後に急速に反転し、24年通年で0.25ポイントずつ6回の利下げを再び織り込むようになった。3月の0.25ポイント利下げの確率は一時50%をやや下回ったが、再び約70%となった。

 

  米国債利回りも同様の動きをたどり、ニューヨーク時間午前8時半の雇用統計発表直後には急上昇したが、同10時にISM統計が発表されると今度は急低下。2年債利回りは雇用統計後には約10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)急伸し、昨年12月中旬以来の高水準となる4.48%を付けたが、その後は一時4.31%まで下げた。

国債 直近値 前営業日比(BP) 変化率
米30年債利回り 4.20% 4.6 1.12%
米10年債利回り 4.04% 4.3 1.08%
米2年債利回り 4.39% 0.7 0.15%
    米東部時間 16時46分

 

  米国債相場は2023年最後の2カ月、米金融当局がハト派な政策に転換するとの見方から急速に上昇(利回りは低下)していた。しかし、そうした動きは今年に入ってから巻き戻しが進み、2年債利回りは週間ベースでは昨年12月初旬以来の上昇となった。

 

   米資産運用会社ブラックロックでグローバル債券の最高投資責任者(CIO)を務めるリック・リーダー氏は「市場は先走りすぎていた」と指摘。最初の利下げは5月もしくは6月になる公算が大きいとの見方を示した。

為替

  外国為替市場でもドルが乱高下。対円では早い時間帯に一時146円台に迫る場面もあったが、そこから急速に下げて一時144円を割り込むなど、荒い値動きとなった。

 

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は6営業日ぶりに反落。ただ週間ベースでは0.9%上昇と、昨年11月初旬以来の大幅高を記録した。

為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1224.11 -0.91 -0.07%
ドル/円 ¥144.77 ¥0.14 0.10%
ユーロ/ドル $1.0937 -$0.0008 -0.07%
    米東部時間 16時46分

 

  クレディ・アグリコルのG10為替戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「データ受けて投資家が緩和期待を後退させる限り、ドルへの支援は続く可能性がある」と述べた。

Dollar Ending Lower After Volatile Trading Day

 

 

原油

  ニューヨーク原油相場は反発。週間ベースでも上昇した。リビアでの生産混乱や中東情勢の緊迫化を背景に、買いが優勢になった。

 

  リビアでは抗議活動によりシャララ油田とエルフィール油田の生産に混乱が生じた。イエメンの親イラン武装組織フーシ派は3日、紅海でまたも商船を攻撃したと表明していた。

 

  ブリンケン米国務長官は中東を歴訪し、衝突がこれ以上拡大するのを回避すべく外交努力を続ける。米エネルギー情報局(EIA)が前日発表した週間データでは、ガソリンと留出油の在庫が大幅に増加したことが示されたが、地政学リスクの方が相場に強く影響している格好だ。

Oil Posts Weekly Gain Due to Geopolitical Turmoil

 

 

 

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は前日比1.62ドル(2.2%)高の1バレル=73.81ドルで終了。週間では3%上昇した。ロンドンICEの北海ブレント3月限はこの日、1.17ドル(1.5%)高の78.76ドル。

  金スポット相場は小幅上昇。ISM非製造業景況指数で雇用指数が市場予想を下回り、年内の急速な利下げ観測が高まったことが背景。

 

  ISMの雇用指数は7.4ポイントと大きく低下し43.3と、2020年7月以来の低水準となった。サービスセクターの雇用は米経済の大部分を占めるため、同雇用の減速は成長を脅かし、米金融当局による速いペースの利下げにつながる可能性がある。

 

  TDセキュリティーズの商品戦略責任者、バート・メレク氏はISMの雇用の数字について、「雇用が弱くなることを市場に確信させている。これが金を一時2060ドル近辺まで押し上げた」と指摘。年内の金融緩和という観点で「金トレーダーらは米金融当局自らが望んでいる以上の積極的な政策行動を織り込んでいるのではないか」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時21分現在、前日比0.2%高の1オンス=2048.30ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は20セント(0.01%)安の2049.80ドルで終了した。

 

原題:S&P 500 Win Streak Ends on 2024’s ‘Terrible Start’: Markets Wrap(抜粋)

Bond Traders Are Resolute on 2024 Fed Cuts as Data Whips Yields(抜粋)

Dollar Ends Winning Streak After Jobs Reports: Inside G-10(抜粋)

Oil Sets 3% Weekly Gain on Libyan Outages, Middle East Attacks(抜粋)

Gold Gains as Weak US Services Data Boosts Fed Rate Cut Wagers(抜粋)