掲題の今朝の朝日社説。
かなり説得的。
自由、競争、機会均等などの諸原則を軽視して、
世襲化・特権化が進む「上級国民」に忖度しかねない
大学の「改革」法案の成立見送りは当然だろう。
いずれにしても、ご参考まで。
国立大学法人法改正案の審議が参議院で始まる。大学のあり方を変える重大な法案だが拙速に提出、審議され、衆議院でも多くの疑念が解消されていないままだ。
中期目標・計画や予算を決める「運営方針会議」を大学に設ける内容。会議は学長に運営改善を要求でき、学長選考に意見を述べられる強い権限を持つ。東京大学など5法人に義務付け、他大学も希望により設置できる。どの大学も「希望」するよう有形無形の圧力を受ける危惧もある。
会議の委員の人選は文部科学相の承認が必要で、政府の影響が強まる。文科相は「明らかに不適切な場合以外は拒否しない」との答弁を繰り返した。だが、日本学術会議の会員について首相が任命は「形式的」と答弁しながら任命拒否問題が起きた。
大学教職員らからは「学問の自由」「大学の自治」を脅かすと懸念の声が広がる。
国立大学協会の総会で永田恭介会長は「唯々諾々と認めてはいけない内容も含まれている」と発言。24日の会長声明は、設置の有無で予算配分に差をつけないことや大学の自主性・自律性の尊重などを求めた。国大協が審議中の法案に懸念を示すのは異例だ。
進め方が拙速過ぎる。大学ファンドの議論の中で大学の統治強化策として浮上。9月以降の限られた議論で法案ができた。大学に関する重要事項も審議する中央教育審議会などにも諮られていない。
衆院の委員会に参考人で呼ばれた学長や教授ら全員が最近まで法案を知らなかったと発言。国大協会長さえ、閣議決定まで法文を知らず対処しようがなかったと語る。
既に国立大には、財界人ら学外者も含む経営協議会がある。運営方針会議が差し迫って必要な理由もない。予算配分に影響しないと言うが、委員の人選でも、予算を握る政府への忖度(そんたく)が懸念される。答弁では、文科省からの天下りや出向も否定しなかった。
衆院の付帯決議は、大学の自治の尊重、研究資金の確保など13項目を注文した。ただ、法文化されなければあてにならない。国立大の法人化では、付帯決議で「法人化前の公費投入額を十分に確保」とされながら、運営費交付金が削られ続けた。
改革の背景には研究力低下への危機感がある。だが次々に施策を立てながら打開できない政府の影響が強まれば、むしろ逆効果ではないか。
参議院で、政府は説明を尽くす義務がある。疑念や懸念が解消できないのであれば成立を見送り、幅広く開かれた議論を重ねるべきだ。