会計監査の改革さらに前へ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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2015年に発覚した東芝の不正会計は様々な改革の起点になった=共同

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

2015年に発覚した東芝の不正会計問題を巡り、同社と株主が旧経営陣に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が田中久雄元社長ら5人に計約3億円の賠償を命じた。現在に至る経営混乱の発端となった不正会計について、司法判断が示された意義は大きい。判決を会計・監査の改革をさらに進める契機にもしたい。

 

判決はインフラ工事での引当金の過少計上などを、米国会計基準に照らして違法と判断した。5人について「違法な処理を認識できたのに是正する義務を怠った」と結論づけた。一方で、パソコン事業の利益のかさ上げなどは会計基準違反に当たらないと指摘。損害賠償を求められた15人のうち10人には賠償を命じなかった。

 

責任を限定的に捉えた面はうかがわれるものの、全体として経営者の注意義務の重みを再認識させる内容と言える。

 

企業の業績報告の土台である会計基準と財務諸表の正しさを確認する監査は、株式会社制度の根幹を成し、公正な投資判断の必須要件だ。その意味で東芝の不正会計は衝撃的であり、再発防止のための制度も導入されている。

 

監査の結論だけでなく重点項目を記す「監査上の主要な検討事項(KAM)」の開示が、21年3月期から始まった。監査の透明度が上がり、投資家は財務リスクを把握しやすくなった。

 

さらに今年4月からは改正公認会計士法が施行され、上場会社を監査する法人は日本公認会計士協会への登録が義務づけられた。

 

協会の審査会が監査体制の不備を認めれば、登録が取り消される可能性もある。監査の緊張感を高め不正を封じるためにも、今後の厳格な運用を望みたい。

 

不正会計の根絶には企業の取り組みが何よりも重要だ。実効性ある内部通報制度の整備を徹底してほしい。東芝の不正の背景としては、「チャレンジ」と呼ばれる収益達成への過剰な圧力や上意下達の閉鎖的な社風も指摘された。企業風土の改革が欠かせない。