前に少し書いたけど(41.(今)クロッカスホリデー①)、オランダの人たちの趣味活動はとても自由で、大事なのはやる人の気持ちだけ、Rhamen のようなこういう地域のチームは、メンバーたちによるボランティアで運営されてる。今年仕事が変わって勉強することも多くなってちょっと忙しいので、〇〇係誰か変わってくれない?私は子供がまだ小さいからあれはできないけどこれはできるわ、リンダが随分一生懸命やってくれたから、次は僕がやろうか、ただ昼間の時間帯は都合がつかない、誰かそこのところを手伝ってくれる? あ、それくらいなら私できますよってな具合。日本のPTAとかなんとかかんとかみたいに、お客さんとオーガナイザー側でぱっくり分かれて、オーガナイザー側が全部用意するということがない。参加の人もみんな少しずつ貢献するから、それぞれの負担が少ないし、うまくいってないことがあったら誰かがアイディアを出して改善するだけ。ダメなところはそれにたまたま当たった人が自分の判断でなんとか乗り切る。誰でもが臨機応変に判断できる、判断してやったことが100点じゃなくても咎められない、70点で回っていれば、それで十分、報告は次に会った時にお喋りベースで。そういう感じ。



 ヘタヘタがはははチームも、キャプテンのモニークを中心に、あれをしたりこれをしなかったり、は!あれするのまた忘れた!ときたり、私たちがクラブハウス担当するとポテトの売り上げがすごいのよね、があったり、しまった、来週の日曜の小学生の試合うちのチームから審判出すんだった、まみもセカンドベースのところでセーフとかアウトとか言うのできる?このまえ講習でてたよね?球審(キャッチャーの後ろでストライクとボールを判断するのもある、メインの審判)は、マリケがやるから大丈夫よ、というふう。そのオランダ小学生2チームの戦う試合で、私は実際に塁審を務めたわけですが、一度勝ってる方のチームのコーチからクレームがついた。攻撃の、負けてる方のチームのランナーが二塁に着いたのより、ボールが戻ってたのが早かったのに、あなたはなんでセーフにしたのだ、と。だってセカンドベースにいた子、ベース踏んでなかったしボール落としたじゃん?と私が答えると、いいや、踏んでた、落としたのは私は見てない、ヘイ、ルーカス、君ボール落とした?とセカンドカバーに入ったルーカスに確認が入る。ルーカスはううんと首を振ってこたえた後で、私の顔を見る。でもごめんよ、私はあなたがぽろりしてこっそりまたグローブにしまったところ見たもん。ルーカスは落としてないと言ってる、とコーチが言うので、じゃあ、ごめんなさい、でもランナーの足がベースに着いた時、彼の足はベースにのっかってなかったと思うんですよ、と答える。それはないと思う、いつも練習でもちゃんとふんでる、と言うから、練習の時って!おい!と思うけど、私が素人臭すぎてなめられてんのかなぁという思いもよぎる。相手のコーチも、野球のことに殊更詳しいわけじゃなく、ただの子供のどれかのお父さんぽい。だいたいこういう時、真の経験豊かなコーチは、いかにも素人っぽい塁審の一回のあやしい判定にいちいち文句をつけてきたりしない、というのが私の印象。そこで私も自分のチームの信用ために強く出る。すみませんけど、今日は私が審判で、私がこの近距離で見て、彼の足はその時乗ってなかったと言っています。だからセーフです。どうぞベンチへ。球審をやってたマリケが、心配してそばまで来てくれていた。向こうのコーチがベンチ方向へ動き出したのを見て、マリケは私にウィンクして、小さくサムズアップをしてくれた。そしてそのコーチに「大丈夫ですね?私にもセーフに見えましたよ。」と一声のっけてくれた。コーチは不満そうだったけど、帰って行った。



 試合後、マリケは、まみ~も~、今日よくやったわね。ベリーグッドだったわよ。でもあれアウトじゃなかった?とにやにやして言ってきた。私もアウトかなぁとは思っていた。ルーカス君は確かにボールを落としたし、ベースを踏みそこなってもいたけど、実はランナーの足もベースに届いてなかった。オランダの小学生の野球は、日本の子のみたいにすごいのじゃなくて、もっととてもかわいい感じなのだ。でも攻撃チームは大差で負けていて、初めて2塁まですすんだランナーだったし、セーフにしてあげたい気持ちで最初にセーフと言っちゃった手前、取り消しにくかったと白状した。ルーカスくんにはちょっと悪かったけど、でも彼は自分のチームメイトのセカンドボーイがそこにいたのにその子を押しのけてカバーに入ってきていて、本セカンドくんにまかせた方がよかったと反省したらいいのに、とも思っていた。それもマリケに教えてあげた。私も見たわとマリケは言った。えへへと、でも反省しながらマリケとクラブハウスで2人でビールを飲んで帰った。



 私たちのがはははチームは、1シーズンに1勝もできなかったこともあった。そのシーズン後半には、さすがに試合前の練習で今日あたりそろそろ勝ちたいわねと言う人がいたり、試合後は元気なくなっちゃうから試合前に勝ったっぽい顔して写真撮りましょうよ、とか、勝ちたい欲もでてきたりした。でも基本的には、勝つも負けるも関係なくて、相手チームの人のすごいプレイに全員ベンチから出てスタンディングオーベーションをしたり、エラーした人には、大丈夫大丈夫+冗談で和ませた。空振りには「グッドスウィング!」、速い球に手がでなかったときは、ボールになったら「よく見たね、いい目をしてる!」で、ストライクになっちゃったら「危ないから見送ってよかったのよー!」と声がかかる。私の最後の試合の打席では、「グッドスウィング!」を2回、3球目ストライクをボール判定にしてもらってからの、ショートゴロだったけど、相手チームの人がノロノロやって、1塁セーフにしてくれた。

 楽しかった。楽しむことを知ってる大人たちの過ごし方。多分だから、子供が幸せな国世界1位にランキングされる。