昨日走っていて、クロッカスがでてきてるのを見つけた。いつも出るときはいっせいにでてくる。朝だったからまだ閉じていたけど、太陽がでてもう少し気温が上がってきたら、ふわ~っと開いて、盛大に、もうすぐ春ですよアピールをするんだろう。

 



 この時期、オランダの学校では一週間の休暇がある。全国同時にではなく、ありとあらゆるところが混みすぎちゃわないように、2つか3つの地域ににわけて順番に、2月の2週目、3週目あたりで。5月にも休みウィークがあるので、こっちを早い方の春休みとか呼ぶこともあるけど、多くの人がクロッカス休暇と呼んでる。ちょうどクロッカスが出てきて、ぶわっと咲いたりするから。この休暇中にぶらぶらバスに乗ってたりすると、ラウンドアバウトの真ん中のまるのところがクロッカスでいっぱいなのを見つけて、バスの乗客が一斉にときめいたりする。国中の人たちが花が咲くのを喜ぶなんて、なんてかわいい、小さな幸せをみつけるのが上手な人たちなんだろうと、嬉しくなる。

 


 この休暇は、スキーに行くのにもちょうどいい時期で、オランダからアルプスまでえっさえっさ車を運転していく家族も多い。子供の休暇に合わせて親も休みをとる&とれるのだ。有休を毎年もれなく使い切るし、そのほかに会社の定めるホリデーがある。いつだって仕事は定時までしかしないし、ワークアットホームも利用すれば、プライベートの時間はずいぶんたくさん持てる。ちょっと荒手というか寛容社会ならではのところでは、具合が悪くて、とか、弟が死んでショックで、と長いこと休んで給料をもらい続けることもできる。そういういいシステムは、できるだけ悪用しないで、もともとのいい使い方をして存続させられるといいと思う。で、夏は特に帰宅してからもまだまだ明るいので、平日の夕方は、家で好きに過ごす他にも、散歩やスポーツ、趣味の集まりに出かける人が多い。もちろん週末も全部自分のものだ。彼らは、子供の頃から、自分が好きなこと、自分を喜ばせることはどんなことなのか、アンテナをはって反応して色々試しているから、自分に合った活動を選ぶのもうまい。今までやったことのないことに挑戦するのにも、感じているハードルはすごく低そう。初心者で下手な人がきても、全然迷惑そうにしないし、笑ったりしない。礼儀で笑わないのではなく、ばかにする気持ちがないのだ。みんなが楽しむためにやっていることだから、うまい人は勝手にうまければいいし、下手な人も勝手に新しいチャレンジや小さな上達を楽しんでいればいい。どう?とお互いに声をかけるし、必要なら手助けする。めんどくさくて手伝ってあげたくないときはしない。感じ悪くしたくないから、ちょっとやだけどやってあげよう、ということをしない。手伝ってもらいたいときに手伝ってもらえなかった、ぶうぶうとも思わない。あと、優れた人だけがすごく賞賛されるということもなく、ひたすら頑張っている人が感心されると決まってるわけでもない。その人にとって楽しければいい、その人がその人のやりたいようにやればいい、というのが根本のところで徹底している。人が生きるやり方として、原点に近いというのか進んでいるというのか、どっちの方向なのかわからないけど、彼らの考え方は、日本の人たちのとはかけ離れたところにある。それで彼らは幸せそう。



 車で休暇に出かけるとき、オランダ人は節約が好きなので、ウェアもブーツも持っているものはなるべく積んでいく。夏には自転車も三輪車も。食べ物も外食したら高いし、もともとファンシーなものを食べることにそれほど興味がないので、食糧もたくさん積み込んで、宿で自炊というか、自前の食べ物を食べられるようにする。なので、車はパンパン。後ろの窓からは、中が見えないくらい色んなものが積み重なって、もこもこのウェアや大きな水のボトルとともに、食パン1斤(スライス済み)の長い袋がいくつも押し合いへし合いしてるのが見える。オランダ車のナンバープレートは黄色いので、それと車の中の込み合いぐらいで、休暇に行くオランダファミリーだなとすぐわかり、ほっこりする。安全運転で楽しんできてね、と心から思う。

 



 うちもやってみた。食パン1斤はうちの家族には多すぎて、食べきるまえにカビが生えてしまうのがわかってるので食糧の運搬はそこそこに。必要なものは現地のスーパーで調達する。娘の柚と息子の研のスキーの腕前が、まだアルプスには早いだろうという初めの方のクロッカス休みは、ドイツのウィンターベルクというところで一週間過ごした。そこは、スキー場なんだけど丘の連続みたいなのが中心にあるタウン。なだらかコースだけが豊富にあって、初心者や子供には最適。小さな静かなドイツの地方村が、その時だけにぎわってオランダ村のようになるんだと思う。ドイツでスキーをする人は、南の方に立派な山がたくさんあるから、そこへはあまり来ないようだった。雪と傾斜を求めるオランダの人はここを目指してやってくる。オランダには、山がないから。

 



 飛行機で行く人もいる。うちも、2020年のクロッカス休みは、イタリア側のアルプスのボルミオというところへ行ってみた。ミラノ空港からレンタカーを借りて、お金持ちの避暑用のお屋敷が並ぶコモ湖沿いを北上してから東の方へ。雪山の上の方はとてもかっこよくて、別のレベルの生き物になったよう。天上の人と会話できるんじゃないかという気分になる。スキー場の山小屋ですらイタリア料理は美味しくて、びっくりぼったくり価格もなく、次に生まれてくるならイタリア人にしてほしいと思った。