いったん他県の病院に転院したTさん。

呼吸状態が悪化していたため、
胃ろうの手術は
人工呼吸器をつけないとできないと
医師から告げられます。


もともとは、90代のお母様のために
人工呼吸器をつけることを
希望していましたが

いざ、選択しなくてはならない
状況になると
迷いだし、深く悩み始めます。


Tさんは敬虔なキリスト教信者で
ALSを発症する前は
毎週、教会に通っていました。

この悩みについて一番に相談したのは
以前から親しくしていた神父さん。
おぼつかない手で長い手紙を書いて
送ったのでした。


手紙が届いて、読んだ神父さんは
とても驚いて、
すぐにTさんのご家族に連絡。

ご家族が病院側と調整をして
神父さんとTさんは面会できることに
なりました。


面会のとき、
Tさんはずっと泣きっぱなしで

ALSの症状の進行に
気持ちがおいつかないこと
人工呼吸器をつけるのを迷っていること
お母様をおいて先に死ぬのがつらいこと

そんなお話をされたそうです。


神父さんは、ただただうなずきながら
Tさんの気が済むまで話を聞いたあと、
たった一言、

神様は、Tさんがどんな選択をしても
いつも見守ってくださっている。
だから、安心して
自分の心の望むとおりになさい。

そう、おっしゃったそうです。


それから数日後、ご家族経由で
Tさんが人工呼吸器も胃ろうも
つけない選択をしたことを聞きました。

面会に行ってお会いしたTさんは
悩んでいた頃とは別人のように
スッキリしたお顔をしていました。


その後、地元に新しくできた施設が
Tさんを受け入れてくれることになり
Tさんは、住宅型有料老人ホームに
移り住むことになります。

施設での生活はTさんにとって
とても楽しいものだったようです。


数ヶ月に渡る入院生活で
自力では全く歩けなくなっていたのが
施設での手厚いリハビリのおかげで
手を引かれれば歩けるまでに回復し

ご家族が
Tさんの好きな食べ物を持って会いに行き
みんなで一緒に食事をすることを
毎週、とても楽しみにしていたそうです。


このまま、1日でも長く
この生活が続いてほしい。

ご家族も、私も、
そう、祈るような思いでおりました。


Tさんも、
このまま体の状態が安定して
ずっとこの施設で暮らせたらいいな、と
おっしゃっていました。


この続きは、また明日書きますね。

最後まで読んでいただいて
ありがとうございました。