最期の安心がすべて | 司法の山を見まわして

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司法書士の宮前知光と申します。
世界遺産「富岡製糸場」の近所で開業しております。
業務と関係したりしなかったりの、日々の雑感を綴ります。

何度か登記手続で関わったことのあるNさん。

ご病気で余命宣告を受けてしまったとのことで、生前贈与のご相談にいらっしゃいました椅子

 

お子さんは、我が家と同じ男子3名。

それぞれに不動産を分け与えるにあたり、私のほうで固定資産税評価額を調べ、所有権移転登記をした場合の各種税額をご提示することとなりました¥

 

贈与にまつわる税金といえば、まず贈与税。

ただし、60歳以上の親から子へ贈与する場合、申告によって2500万円まで(とりあえず)課税されずに済む制度があるため、メリット・デメリットについて要検討ですメモ

 

それと、忘れた頃にやって来る不動産取得税。

さらには、登記をする際に必ず納める登録免許税あせる

 

そう、この国ではちょっと不動産を動かすと、たちまち税金まみれになるのです。

そんなこんなであれこれシミュレートしておりますと、男子3名のうちのお一人が来所ひらめき電球

 

「オヤジに生前贈与を受けるよう言われたんですけど、土地なんてべつに欲しくないんですよね」

「そうですか。欲しくない方にムリヤリあげることは実の親でもできませんからね。ただ、お父さんとしては、亡くなった後の相続が心配なのだと思います」

「それも大丈夫なんですけどねえ。ウチの兄弟は嫁さんたちも含めてみんな仲いいし、遺産の取りっこなんて考えられないですよ」

「わかりました。このこと、お父さんにお話ししてみます」

 

入院中でも携帯はつながるとのことでしたので、早速お電話さしあげたところ、すでにNさんは嵐の息。

「息子さんたちがおっしゃるには、遺産争いなんてありえないそうです。生前贈与はだいぶお金もかかりますし、それでもご心配ということであれば、公正証書の遺言を作成しておくという手もありますけど」

「いや先生、ありがとうございます。私はねえ、それ(遺産争いなんてありえないとの言葉)だけが聞きたかったんです」

 

苦しそうに絞り出された声は、それでも嬉しそうでした。

そしてNさんは、翌日、亡くなりました。

 

ひょっとすると、お身内以外でまともにお話しできたのは、私が最後だったかもしれません。

亡くなる直前に安心をプレゼントできた、などと思い上がるつもりはありませんが、人生結局のところ最期の安心がすべてなのではないかと、Nさんの声音を噛みしめているところです三日月