実印は「豪華なハンコ」ではありません(その2) | 司法の山を見まわして

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司法書士の宮前知光と申します。
世界遺産「富岡製糸場」の近所で開業しております。
業務と関係したりしなかったりの、日々の雑感を綴ります。

いやあ、びっくりです。

少し前に実印のことをここで書いたら、実際の不動産取引でそのまんまの場面が出現えっ

 

一般に、不動産取引に立ち会う際、司法書士が最も神経を使うのは、売主さんの実印&印鑑証明書です。

これがもし、印影が合わないとか印鑑証明書が偽造品であるとかした場合、法務局で所有権移転登記が弾かれ、多額の売買代金を支払ってしまった買主さんに損害が生じ、もろ司法書士の責任問題となるからです叫び

 

今回は、売主さんの実印&印鑑証明書は問題なくオッケーでした。

私が、「むう、これは……」となったのは、逆に買主さんのほうサーチ

 

あれ? 買主さんのハンコは実印でなくてもよいのでは?

と思ったアナタは、普通の業界人か普通でない一般人ですねにひひ

 

取引がらみで買主さんが必ず実印を押さなければならない書類というのもじつはありまして、それは抵当権設定登記の委任状です。

住宅ローンを組み、買いたてほやほやのマイホームを銀行さんへ担保に差し出します、という手続ですね家

 

この委任状に、あらかじめ買主さんから「実印」を押してもらっていたのは、銀行さん。

銀行さんといえば融資のプロ、そうそう印影を見間違えることもないはず。

ないはずだけど、やっぱり何度見直してもこれは微妙を通り越して、相当あやしいぞむっ

 

いつまでも印影とのにらめっこをやめない私に、関係者がざわつきはじめますメガネ

 

「先生、どうかしましたか」

「いや、すみません。このハンコが、印鑑証明とちょっと違うように見えまして」

悪気のない買主さんを傷つけないよう、やんわりと口にします。

「そうですか? 同じように見えますけど」

「大きさも形もそっくりなんですけど、よーく見るとサンズイの真ん中の点が、枠に接していませんよね。それと右側の棒も、ちょっとだけ曲がっています目

 

そんなこんなで、なんやかやあって、買主さんと銀行さんが至急市役所まで走り、これまでの印鑑登録を廃止して、今ここにある印鑑を新たに登録したうえで、印鑑証明書を取り直す運びとなりましたひらめき電球

 

「細かいこと言って申し訳ないのですが、印影が合っているかどうか判断するのは法務局の登記官になりますので。私が登記官なら通しちゃうかもしれませんが、なにしろあちらはマジメでおカタいお役人さんたちですからねシラー

 

というふうに法務局を軽くワルモノにしつつ(?)場をなごませ、一件落着。

まあ司法書士とは、心臓にイヤでも毛を生やさなければ務まらない、因果な商売ではあります汗