サントリー美術館展覧会「歌枕」あなたの知らない心の風景 | けろみんのブログ

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歌枕ーあなたの知らない心の風景 公式サイト 

2022.6.29~2022.8.28

六本木 東京ミッドタウン 

サントリー美術館にて開催。


「どうしたらそこへいけるのだろうか」



何ともミステリアスなコピーを添えた展覧会、歌枕。

サントリー美術館所蔵品の他、30余りの美術館、博物館、お寺などからテーマに沿った逸品約137件(展示がえ多数あり)を貸し出された、見応えのある展覧会、これぞサントリーの底力と思わせる展覧会でした。


7月27日に大きな展示替えがありますが、その翌週8月3日から第一章が全展示替えとなるので私は8月まで待って、もう一度見に行こうかなぁと思っております。詳しい展示リストは公式サイトにありますのでご確認ください。


さて、歌枕。もちろん私は「枕詞」とごっちゃにしておりました。それしってる!「あおによし」なら奈良、「たらちねの」なら母、「しろたえの」なら雪、じゃろ?

しろたえといえば、今はチーズケーキ。

と思わせておいて違います。枕詞の親戚のようなもので、歌枕が登場すると特定のイメージ、感情、風景と結びつくのです。


歌枕は歌に詠まれた土地を指します。万葉集あたりだとしろたえのがま白にぞだったり、まだ定まっていない所がありますので古今和歌集、新古今和歌集辺りで詠まれた和歌に登場する特定の山、川、海、土地一帯などに共通のイメージがへばりついて離れないと言った感じです。時代が下ると伊勢物語、源氏物語の舞台も歌枕として定着。

以前伊勢物語の在原業平についてブログにしましたが……

こうして隅田川⇒都鳥

というイメージが出来上がるのです。


どんどんイメージは理想化され、行ったことがあろうがなかろうが関係なく「心象風景」として日本人の心に刻まれているはずです。刻まれてない方はスルーでOKです。

今で言えば銀座といえばシースー(寿司)、六本木といえばパリピ、横浜といえば港町、川崎といえばヤンキー、福岡といえばヤンキー、みたいなものですね(諸説ある)

そうそう、先日お墓参りにいき、ついでに川崎浮世絵ギャラリーで月岡芳年展にいきました。



この展覧会では、そんな歌枕を描いた屏風にはじまり、成立過程の美しい「切」(かっこいい料紙にかっこよく書をしたためたもの)から、描かれた歌枕と和歌の密着度、憧れの旅の歌枕、身の回りの品にも歌枕を描くことで丁寧な暮らしに早変わりの品々(わざわざ歌枕に出てくる橋(長柄橋)の材木を使って硯箱をつくるとは!)楓の葉の形のお皿に流水を書いて竜田川とするアイディア!など盛りだくさんです。

歌枕ってどんなものがあるのか?が私にとっての1番の関心事でしたのでせっせと、書き写してまいりました。
冒頭の「宇治」は、今年初めて訪れた場所でもあるのですが歌枕になると途端に複雑な心象風景になるのが面白いです。

【宇治】 憂し、橋は浄土に行く橋 、水車は輪廻転生、 柳 、網代

【難波】 葦

【竜田川】 楓

【富士山】思い、けむり

【伊勢】浜萩、葦

【住吉】 松波

【宇津の山】 蔦楓

【吉野】 桜

【陸奥】 まだ未ぬ幽玄の名所

【白山】 雪

【守山】 漏る(雨などが)、山

【住吉】 松

【三笠山】 さす(傘などを)

【筑波山】 主君の恩德

【葛城山】 桜 手のとどかぬもの  

【鏡山】 曇らない、澄む、磨く

【住之江】 波

【井手玉川】 山吹

【佐野渡】 雪

【天橋立】 松

【須磨】 塩焼き、関、桜

【明石】 月、船

【橘小島】 変わらないもの

【朝妻】 妻(かりそめの)遊女の舟 

【鳥篭の山】 床の山、枕、寝る、臥す

【野路の玉川】 萩

【三保浦】 富士、清見潟

【初瀬山】 桜、檜原 

【長柄橋】 古いもの、壊れたもの

【富士】 季節を超越した冠雪、永遠

【塩山】 「ちょ」と鳴くことから千代、千鳥、長寿

【吹上浜】 浪、白菊

【広沢池】 月

【武蔵野】 遮るもののない原野、薄、月

【隅田川】 都鳥、桜

【忍草】 偲ぶ、し信里

【小倉山】 仄暗い、もみじ、鹿

【八ツ橋】 燕子花


全然順不同なので頭の中で出典順、場所、種類などのカテゴリーに分けてもらえたら幸いです。

皆さんお気づきと思いますが場所が京都から離れるほど、「果てしない」「幽玄」といった、未知の世界、まるで地平線の先にある外つ国のように謳われるのがあづまのくにに生まれ育った身としては「憂し」な感じであります。


本当に魅力的でしょう?是非本展覧会をご覧下さい。


こちらの動画では、この他にも2つの展覧会をハシゴした一日を撮影して、展覧会の場所など分かるようになってます。面白く撮れてる……と思ったらコメントください!

ナマニクさんコーナー!
まずは私がナマニクさんに「リコリス・ピザ」の鑑賞直後に行ったインタビューから!