東京国立博物館 名作誕生 常設展示など | けろみんのブログ

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日記・観た映画のこと・観た展覧会の感想

今日まで開催の「名作誕生 つながる日本絵画展」の後期展示を見に行ってないことに気がつき慌てて出かけました。彦根城博物館所蔵品の国宝「風俗図屏風(彦根屏風)」がどうしてもみたかったのです。変な姿勢で呑気な顔をした人物が印象的です。



風俗図屏風の繋がりをまず岩佐洛外洛中図(舟木本)から見ていきます。洛中洛外図とは京の町中(洛中)から遠景の郊外(洛外)まで名所を鳥瞰的に描く16世紀初頭に成立した構図です。船木本では歌舞伎小屋や遊女街に注目し、老若男女、貴賎富貧描かれた人全ての視線を追うと、忙しくて見るのが大変です。後にこの風俗図の人間関係にのみ絞って描いた作品が登場していきます。
井伊家に伝わった「風俗図屏風」は複数の画家が参加して描かれたそうで描写が細かいです。金地一色のシンプルな背景に、服装も持ち物も詳細に描かれた人物が相関図のように描かれます。人物の配置や視線のかわし方に気安さやおおらかさがあって、刀に寄りかかってリラックスした若者など「17世紀のゆとり世代」でしょうか。この屏風は見る機会がなかったので今回の展覧会で見れて良かったです。







目当ては風俗図屏風でしたが、その前に観た伝俵屋宗達 烏丸光広賛「蔦細道図屏風」が衝撃的でした。
映画に例えたら人気の小説を映画化するとして、普通なら下の写真のNo.67や74のように舞台を据え、人物を配して情感たっぷりに撮るでしょう。ところが俵屋宗達は持ち前のデザイン感覚で余分な(登場人物まで)全て取り去り蔦と土跛、そして伊勢物語を示す和歌のみ。
道に蔦、空間に蔦、そして詩。前衛アートですね。なんとなくセザンヌの「オーヴェールの首吊りの家」をおもいだします

何百年昔の芸術でも新しい感覚というものは時代を超えて今見てもなお「新しい」のであると気付かされた作品でした。

せっかくトーハクに来たので常設展も少し鑑賞しました。
この部屋にくると照明が良くて、迫力がある写真が撮れるのでつい撮影して、よく見ないで帰ってくる不始末…

東南アジアでは良く見かける涅槃仏

安らかです…

18室は春ー初夏らしい作品になっております。
下村観山「春雨」
これは、見応えありました!
この絶妙な顔のチラ見せ、うなじだけ見せるとは…

下駄って雨の時便利ですね!

後ろを振り返る女性のいる3人ぐみと急ぎ足で橋を渡る女性はたっぷりと距離があります。
激しい雨は春の暖かな空気でもやになり、橋の向こう側の欄干が霞んでいます。女性も横顔がのぞく程度、主役は「雨」なんですね。
穏やかに見えて強い女性を雨で表現してるみたいにみえました。




怖い怖い(淀川風)
上村松園「焔」
光源氏の受けるべき罰を全て背負わされる六条御息所の生霊を描いた作品。
嫉妬心は生霊となり、相手を殺せる能力がるので注意です。何故か当人でなく相手先に矛先が向くのも特徴。
上村松園が描くと曲線が全て軽やかですがこの作品では身を振り乱した動きにつながる

藤に蜘蛛の巣が絡まるカッコいい着物。蜘蛛の巣の曲線も見事
「焔」冷たく燃え上がり自分では制御できないほど。
対策:浮気性の人間を好きにならない

常設展の特集ですごく面白かった「高野切ーひらがなの美」
担当研究員様の一言「美しいひらがなを見に来てください」
この特集の記事書くつもりでしたが、トーハクの説明と、担当研究員様のブログがとても詳しくのっておりますのでそちらを見ていただくとこの3人の書き手の違いや美しさの秘訣が良くお分かりいただけるかと思います。

1089ブログの研究員様が書いた記事を読むと、益々ひらがなの美しさというものに興味が持てますよ