出光美術館は初めて行きました。有楽町からほど近い帝国劇場の9階で、休日なのにゆったりとみることのできる静かな美術館でした。
特に葆光彩という彫って彩色した上につや消しの釉薬をかけた作品は内側から光が溢れ、アールヌーボーの影響を受けながらも光のありかたは行燈がぼんやり灯ったように限りなく日本的でした。
私は陶芸はおろか美術全般まるで無知なのですが、説明書が丁寧でそれに沿って鑑賞すると、何も知らない私のようなものでも見どころが解り、ありがたかったです。
葆光彩の説明も具合的に「鳥の向いた視線の先に光があるところや、葉の先の彩色が少し内側に入っていることにより光をより感じられる・・・」
そのとおりそこには柔らかく光に溢れた世界が小さな花瓶に広がっており感動しました。
同じ白でも甘い白で、花が一番高く彫られ一段と白かったり、蛋殻磁は細かい釉のひびに紅をすりこんだ繊細な色合いだったり・・・
他にも宮沢賢治の小説のように色を細かく分類して、詩的な名前がついている作品が沢山ありました。
91歳で亡くなった板谷波山は数え年80になるまで、故郷の80歳の老人に杖を贈り続けたそうです。
それらの杖には鳩の形の握りがついていて何故かというと、鳩は食べ物にむせないから、いつ迄も元気に食べて長生き出来るように、という願いが込められているからです。贈った杖は全部で319本に及びました。
また、故郷の下館の戦没者供養のために祈りを込めた観音聖像も贈りました。
そんな優しく誠実な人柄が作品に生命の暖かさを生み出しているのかもしれないと思いました
工程品と一緒に展示してあるものは、元の彫刻がどのようになっていたかわかり、とても興味深いです。
素焼きでみる彫刻は思ったよりも深く彫ってあり、釉薬をかけもう一度焼くと、滑らかな凹凸に変わる様が凄いです。