劇団「空感エンジン」 第6回本公演
2月20日~24日
脚本…田島英明
演出…藤森一朗
24日 12:00~(B班千秋楽)/16:00~(A班・大千秋楽)
田中和夫…(B)田島英明/(A)小川暖
西村聡美…(B)松田真理/(A)黒木梨帆
山下治…(B)加藤裕己/(A)勝也
武田久美子…(B)中山久美子/(A)古川原香織
ももこ…(B)西岡優妃/(A)栗本有美子
斉藤さとし…鈴木了平
斉藤まちこ…白木あゆみ
げんた…赤垣正樹
まさお…(B)大森勇一/(A)松丸雅人
こうじ…(B)出倉俊輔/(A)鈴木健太郎
ひろし…(B)今田尚志/(A)奥山三代都
社長…(B)山本雄二/(A)三好忠幸
佐々木有紀…(B)松野梨紗/(A)桂絵美子
佐藤麻里…(B)田口幸恵/(A)木村ゆめこ
内山大輔…(B)央川奈知/(A)末廣大知
曽根山沙紀…(B)森本亜美/(A)光希沙織
阿部孝幸…泉谷明裕
和田…(B)外崎将太/(A)川竹達也
明確な主役が設定されておらず、ストーリーへの関わり方・出番の長さも含めて各役のバランスが良かった。その点が逆に、観劇に慣れていない観客にとっては掴みづらかったかも? テレビの2時間ドラマとは明らかに違う作りであったから。
小劇場はおおむね観劇ファンが足を運ぶものだが、大きいハコの劇団公演になると、演者の知人・縁者がたまの観劇に訪れるケースが増える点、ハコが大きいのと出演者が多いのとで伏線を見逃がす・聞き逃がすケースがある点、尺が長い・シーンが多いせいもあって伏線を即座に思い出せないことが起こりうる点は考慮するべきであろう。
とはいえ、観劇マニア向けに特化して作るべきではないのと同様、(便宜的な表現で)素人に迎合して作るべきでもない。本作は、マニアにはコクを感じさせ、素人でも楽しかったと感じさせられる良品であったと思う。
カットバックに伏線を絡ませていたのが上手かった。泉谷の苗字が明かされるくだりは、J・P・ホーガン「星をつぐもの」を想起させられた。「レッド★スター」を観たあとでも、「あーなるほどな。うまい」と膝を叩く伏線・収束であった。
玄人筋の下馬評に反して、B班の方がまとまっていた印象。特にホームレス5人は、演り慣れたメンツでのA班よりも、初共演であっただろうB班の方が結果としてはガッチリまとまっていたように感じた。
原因のひとつは、出倉の出力加減がちょうど良かったかなと。今田の手堅く味のある芝居もバランスに寄与していたように思う。
今田は背中の表現が上手かった。哀愁・寂寥・やるせなさを背中に滲み出させ、単調な毎日が続く閉塞感を無言で表現した。この表現があるから、ひろしの企みに説得力を持たせられる。元の生活を取り戻したかった ひろしの想いに観客が共感できるのだ。
主役不在とはいえ、田中は両班とも存在感があり、山下課長との高低差(人間関係)も判りやすかった。田中が河川事務所に異動してきたいきさつに関してはざっとしか触れられておらず、山下および西村との関係性は、役者の動作・目線などで補完されている。その辺を逐一積み上げておかないと、のちの山下の暴走が浮きかねない。加えて、田中のふるまい方いかんによっては、西村との“その後”を観客に予感させる効果を産み出すことも可能である。
小川は映像も含めて芝居を観たのが初めて。ハートウォーミングな役柄にハマりそうな印象を得た。田中&西村のバランスは、A班の方が個人的にはしっくりきた。その要因のひとつは、黒木が西村をごく平凡な人間像に創っていたから。
斉藤妻が夫に、自分を信頼してくれなかったことを責め、手を差し伸べるシーンでは、2度とも泣かされた。同シーンはほぼ一方的に白木がセリフで詰め寄る。まちこ=白木の想いが強く伝わってきたから泣けたのだろう。