フリーライダー問題とは、経済学あるいはその1分野であるゲーム理論によって提唱された問題である。

ある集団が公共財を利用する際に必ずフリーライダー、すなわち「ただ乗り」が発生するというものである。

例えば日本では国民が納めた税金によって警察や消防といった公共サービスが成り立っている。

しかし脱税者であっても公共サービスを利用することは可能であるし、その場合に特別な料金を請求されることもない。

きちんと税金を納めている人間と同じ便益を享受することができる。

フリーライダー問題が発生することの最たる問題点は、フリーライダーの増加によって公共財そのものが成り立たなくなってしまうことにある。

先の例で言えば、どう考えても税金を払わずに公共サービスを利用している方が有利である。

真面目に税金を払ってこれらのサービスを利用しないでいるのは非常に無駄なことである。

しかし全国民がそう考えて税金を払わずに公共サービスを利用し始めたらサービスそのものが成り立たなくなる。

フリーライダー問題の難しい点は、フリーライダーでいることが有利であることが明白で最初の段階においてはフリーライダーは確実に発生して利益を獲得できるが、後にはフリーライダーの増加が公共財の価値を低下させるために全員の利益が減少してしまうというところにある。

すなわちフリーライダーの発生と増加が「その方が得なのは事実」という理由で容認された瞬間に、いつか利用される公共財の価値が著しく低下する、あるいは公共財そのものが成立しなくなるということも容認されなければならなくなるということである。

フリーライダー問題の解決策として考えられるのは、各個人に責任と便益をきちんと配分することが挙げられるだろう。

例えば先ほどの公共サービスの例で言えば、強引な方法ではあるが納めた税金額に応じて利用できる公共サービスの量が決められる、とすればフリーライダーの発生はかなり抑えられる。



さて、アイドルグループにも同様のことが言える。

アイドルグループに限らず芸能事務所という単位にせよ「稼ぎ頭」あるいは「看板・顔」という存在がある。

このような存在があるからこそ組織全体の知名度が高まり、バーター出演といった形で注目されていない人間を売り出すことができるのである。

しかしながらこういったトップランナーが築き上げた実績をただ利用するだけの存在が必ず発生する。

アイドルグループにおいてはどのようなメンバーであれ各個人にファンがつく。

よほど悪い行動をとらない限り何もしなくてもファンはつく。

それが知名度や好感度の高いグループならなおさらである。

しかしそれに甘んじているようでは高みを目指すことはできない。

そしてフリーライダーの問題点として指摘したように、ただ自然発生的についてくれたファンに満足しているようなメンバーが増加していけば(特にトップ層の脱退や卒業などを契機として)グループ全体が一気に瓦解してしまう。



アイドルグループにおけるフリーライダーの問題としてもう1点指摘しておかなければならないのは、フリーライダーとなる(ように誘惑される)ことで自分自身の可能性の芽を摘んでしまいかねないということである。

フリーライダー問題の大前提であるが、フリーライダーであることは個人の目線で見ればローリスクハイリターンであり合理的な選択である。

よって個人をいくら責めた所で根本的な解決は望めない。

よく大勢のアイドルグループのファンにありがちなのは、「あいつは下位なのに何も頑張らないからダメなんだ、ファンが甘やかしてるからだ」といった声である。

確かに事実は事実として受け止めなければならないが、メンバーの心理からすればトップにいるメンバーの苦労を間近で見ているだけに、今の安定した人気をキープする方が楽だと考えるのは当然であろう。

またファン心理としてもトップを目指してアイドルが疲弊し、また実際にトップとなって遠い存在になっていくことを考えれば今の状況で十分だと思うのも無理はない。

このように各個人を見れば実に合理的な判断をしている。

その状況下においてフリーライダーを防止する方法はどのようなものであろうか。


先述したように、各個人に責任と便益を配分することがひとつの方法として挙げられる。

AKB48で行われている選抜総選挙は非常に有効的な手法であると思われる。

陰ながらの努力というものは各メンバーそれぞれあるだろうが、メンバーの個人としての活動がどのように評価されまたどの程度広い範囲に訴求できているかという対外的な側面が計られる。

これによってフリーライダーでいるだけでは自分の現在の位置をキープすることが困難であるという危機感を植えつけることができる。

またAKB48で言えば下からの圧力を高めている点も非常にフリーライダー問題の解決に一役買っていると言える。

もう1点、上からの圧力を高める、すなわちトップ層にいつまでもフリーライダーを育てるような活躍をさせないようにスピンアウトさせるという方法も考えられるが、これは組織全体の魅力を下げかねないという意味で判断が分かれるところであろう。


アイドルグループの場合もう1つ解決の方向性を挙げるとすれば、トップ層が獲得した便益がトップ層にしか享受できない固有のものとしてしまうということがあるのではないか。

例えばあるグループで注目されているメンバーはとても歌が上手いとする。

このメンバーのおかげでグループ全体の歌唱力も高いと一般的に思われている、そういう状況を考えてみる。

一方で人気が下位のあるメンバーは大変な音痴である。

この場合、この下位メンバーはフリーライダーとなりえるだろうか。

何も努力をせずに歌唱力が高いというイメージを享受できるだろうか。

それは違う。

そしてもう1つ違う点がある。

それはこのままトップを目指しても同じように歌唱力の高さを売りにすることができるか非常に疑問であるという点である。

だとすればこのメンバーはどのように頑張ればいいのか。

それは自らの適性や魅力を冷静に分析しもっとも向いている方向へと成長していくしかない。

すなわちアイドルグループにおけるフリーライダー防止策として考えられる方法は次のようになる。


1:新規メンバーを募集する際はトップ層に代わるメンバーではなくトップ層と異なる適性を持ったメンバーを募集するようにする

2:メンバーには自分にしかない成長の方向性を探らせる。あるいはそのようにマネジメントが誘導する。


アイドルグループに限らず組織というものは全員が目標や理念を共有しひとつの方向に向かって突き進んでいくものだというのが常識的理解となっている。

しかしながらそのような組織においてはごく自然にフリーライダーが発生する。

そこで個人個人が自律的に行動するようなシステムが必要となる。

アイドルグループにおいては幸いなことに組織として活躍することと同様、あるいはそれ以上に個人のパーソナリティが立っていることが重要視される。

アイドルグループのメンバーはこの性質を最大限に利用し自分にしかない魅力を開花させるように努めていくべきである。

それこそがアイドルグループという組織全体の魅力を継続的に高めていくことにも繋がるだろう。