会員同士で子どもを預けたり、預かったりする横浜市の「子育てサポートシステム」が開始して10年を経過した。当初は母親のリフレッシュや冠婚葬祭などでの利用を想定していたが、最近は保育園への送迎など、就労援助目的の利用が大半を占める。課題は、子どもを預けたい会員数の増加に比べ、預かる会員数の伸び悩み。市子育て支援課は「システムの周知を図り、支援の輪を広げたい」と話している。
「お帰りなさい。今日は楽しかった?」—。市内の幼稚園から出てきた田幡いさらちゃん(3)を迎えたのは、会員の井上理恵さん(50)。母親の代わりに週1回迎えに行き、いさらちゃんの自宅で遊ぶ。
井上さんは子育てが一段落したこともあり、4年前に入会。いさらちゃんとは「いさちゃん」「いのっち」と呼び合う仲。「子どもは本当にかわいい。孫みたいですね」と目を細めた。
母親の田幡美江子さん(44)は、NPO法人スタッフとして活動する際、井上さんに依頼する。「井上さんとは上の子どもの時からの付き合いで、信頼している。システムがあって本当に助かっています」と話す。
システムは2001年10月にスタート。市内在住の子ども(生後57日~小学6年)を預けたい利用会員が報酬を払って、提供会員に預かってもらう仕組み。市から委託を受けた市社会福祉協議会が運営している。
利用会員からのサポート希望を受けて、コーディネーターが日時や地域などの条件に合った提供会員を紹介。会員同士で顔合わせをした上で、子どもを預ける。利用時間は原則午前7時から午後7時までで、報酬は1人1時間800円。万一に備え、傷害保険などにも加入する。
11年度の利用件数は3万8056件。1番多いのは「保育所、幼稚園のお迎え」(5313件)で、2番目が「保育所、幼稚園のお迎えと預かり(提供会員宅)」(4676件)。約80%が保護者の就労援助を目的としており、買い物やリフレッシュでの利用は3%ほどだった。
子どもの送迎に毎日利用する会員がいる一方、なかなか提供会員が増えない厳しい現状もあるという。11年度末時点の会員数は、利用会員6320人に対し、提供会員1468人にとどまっている。7年前と比べると、利用会員は約2・7倍になったが、提供会員は約1・7倍と伸び悩んでいる。利用・提供を兼ねる両方会員は613人だった。
市社協は「時間に余裕がある60代の人に参加してもらえるよう、呼び掛けていきたい」と意欲を示している。
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