おはよう。

朝から強烈に洗濯。

洗濯に意気込む事丸3時間。

日曜の晴れた日には、Bill Joelの曲がよく合う。

Miami 2017 , The River of Dreamsなど。

洗濯のシメを飾るのは、洗濯機にかけられないナイロンパーカーを手洗い。

「お洗濯の際は手洗いとし、洗濯機、乾燥機でのご使用はお控え下さい。」

もみもみ。ごしごし。ぎゅーぎゅー。

水を含んだパーカーは、重い。物凄く重くなる。

これを着て、海で溺れたら・・・ヤバイな。と思った。

 *

市大会、郡大会を順調に勝ち上がり迎えた県大会の夏。

これが中学最後の大会だ。

一度負けたら、即終わり。

中学球児も高校球児と同じなのだ。

対戦相手は確か、熊谷の学校だったと思う。

結果は、負けた。点差も憶えていない。

ただ、送りバント、スクイズと立て続けにバントミスで勝機を逃した記憶だけはある。

帰りのバスは、負けて落ち込むはずが僕らナインたちは清々しい顔をしていた。

ここまで共に戦い続け、やり残したことはもう無い。と云わんばかりに。

敗戦から一夜明けてすぐ、家族で茨城へ向かった。

県大会まで進んだお陰で、僕の貴重な夏休みは2/3を過ぎようとしていた。

大洗・那珂湊に着いた頃には、昨日まで白球を追っていた野球少年の面影は薄れ、浜で浮かんでいる日焼けした地元っ子と変わらなかった。

市場には目もくれず、海へダイブ。

新品の浮き輪やビーチボールをサイドスローで海面に叩きつける。ここで面影が少し浮上。

そして沖合い50mぐらいの所に、子供たちが遊べる海上遊具が浮いていた。

象の形をしたスライダーが人気の様だ。

後でバレないように横入りでもするか。と一瞬考えた。


今まで、夏は全て野球に注いでいた。

それからの解放感は堪らない。

来週から塾の夏期講習・特別講座が待ち受けている事など、この時頭の中には存在しなかったはずだ。

海に入り一度も浜に上がらず一人背泳ぎで黙々と泳ぐ。背泳ぎが得意だった。

泳ぎ疲れ、海上遊具へ浮き輪と共に移動しようと思い体を反転させた。

そこであぁ、結構潮に流されていたのだと気付いた。

そして方向を修正しようと泳ぎ始めた時、僕の目に奇妙な光景が移った。

30代ぐらいの男の人が物凄く変わった犬かきで泳いでいる。

でも一向に進まない。何だろうと思って近付いた瞬間、僕は一気に海へ沈んだ。

僕にしがみ付き浮き輪代わりにされたのだ。

その人は完全に溺れていた。

もがけ様にももがけ無い。がっしりと組まれ身動きが取れない。

何とかして解かなきゃと思えば思うほど、焦って来る。

お互い必死だった。

程無くして、その人が浮き輪に捕まってくれた。

僕も気付いたら海面に上がっていた。

呼吸が荒く、心臓の鼓動が浸かっている海よりも波打っていた。

想像以上だった。怖かった。

結局その人はそこから僕の浮き輪で無事に浜に上がった。良かった。

しかし僕の浮き輪は返されなかった。その人も相当焦っていたのだろう。

浜に上がっても尚、浮き輪から体を離さないでいた。


気を取り直して、象のスライダーへ向かって泳ごうとしたが、足がすくみ動けなかった。

次に来た時、20回は滑ってやろうと思った。


***


書いていたら洗濯機は止まっていた。


おわり