27、真新しい扉
ー動かなければ
という衝動に駆られ、引っ越し先はどうしようかと考えているときにふと思い出した。
以前、あっすんがプチ旅行へ行ってくると出かけ、「めっちゃよかった!」と興奮ぎみに帰ってきて巨大なパンを土産にくれたことがあった。
「ブリスベン!めっちゃよかったよ!一回行ってみ!」
ーブリスベンかぁ、どの辺だろ…
私は、すぐに図書館へと向かった。
図書館では無料でパソコンが使える為、ネットで何かを調べたい時にはいつもそこを利用していた。
Brisbane...クイーンズランド州の州都で、シドニー、メルボルンに次ぐ大都市。移民も多く、多国籍。
地図を見ると、バーリーヘッズからバスと電車を乗り継いでもそう遠くない。
ーよし、ここにしてみよう
そう決めて、シェアハウスを探し始めた。
離れた場所のアコモデーションもネットから検索できるサイトがある。
このとき私は、自分にひとつ課題を出した。
ー100パーセント英語環境のシェアハウス
そう、私はオーストラリアの生活には慣れてきたけれど、英語にはまだ不慣れだったし、苦手意識が拭いきれないのだ。
だから友達も、日本人ばかりと仲良くなった。
英語でのコミュニケーションに、ついつい壁を作ってしまっている。
自分を成長させるには、環境を変えるのが一番だ。
家賃や他の条件を絞り込むと、いくつかヒットした。
その中で私の目を引いたのは、今の家賃と同額(週100AUドル)で、オーストラリア人オーナーのシェアハウス広告だった。
オーナーはIT関係のサラリーマンで、一緒に暮らしているのはタイワニーズのガールフレンド、水道光熱費も込み…
“ときどき英会話も教えます” と英語で書いてある。
ここにしてみよう。
私は少し時間をかけながら、“シェアハウスを見学したいので良い日を教えて欲しい” と英語で書いて、そのシェアハウスオーナーへEメールを送った。
あとは、返事待ちだ。
真新しい扉を開く為の鍵をようやく見つけたような、好奇心と冒険心とで、妙に胸が高鳴っていた。
つづく
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