友野雅志の『Tomo俳句』 -7ページ目
梅の実のかたさなめらかきみの肩
青信号梅ほのか甘し裾ゆれる
ひれ伏してキスす地はきみの梅の香
ラッパと口笛西茜梅の種
梅硝子叩いて醒める昼の夢
秋分にこころの色かわりたり
秋分遠きふりかえれる歳になり
秋分知らぬ子の笑みを祈りたり
秋分知りて胸青さすきとおる
地下鉄の母の手やさし秋分日
赤きみな枯れよ風言う獺祭忌
獺祭忌無花果にワインを注ぎたり
獺祭忌もぎたての実の重さ知る
獺祭忌地刻み翔びたつ翼聞く
咽喉つまりまだ語りたし獺祭忌
街路に一葉時の向こうが見える
一葉夜の雫残りて空は絹
地とともに雨に叩かれ一葉あり
一葉一葉避けてあゆむ嵐後
あたたかく虫の痕ある一葉かな
俯いてハングルの地の白むくげ
恋文やむくげの揺れる朝の風
思いより高きでむくげ見あげおり
見上ぐむくげに陽もしろくひろがりて
街灯にむくげの群れのあふれ出て
夜をかきよせる指の跡秋の空
秋の空魚の鰭がふるえてる
綾となり色いろいろの秋の空
秋の空波音かすか揺らしたり
足音駆ける窓の隅に秋の空
八月尽皮を残してまだ生きる
死とよろこびの声掠れ八月尽
レクイエムとつぜん響く八月尽
八月尽闇ふりかえり炎見る
濡れている赤カンナなが日に買えり
カンナの雄蕊折りゆく指の赤さ
渋谷裏夢にならびて紅カンナ
夕空にまっすぐ茜のカンナ立つ
赤坂をいつつ曲がれば赤カンナ
秋澄めば枯木の影に横になり
秋澄みて風のかたちに息を吐く
娘のきみ来るまぼろしの秋が澄む
古い黒鍵たたきながら秋が澄む
三歩先で新たに秋澄んでいく
天地洗い秋はじまる手はポッケに
夢の雨秋かおるまで聞いている
羊羹に虫の来ぬ秋しずかなり
口閉じて歩むさきは秋なにもなし
胸埋めたくて青い杯秋こぼす

