友野雅志の『Tomo俳句』 -35ページ目
風すぎて虫あふれたり夜道かな
虫なけば黙りて帰るどこの底
虫ともに天狗とびかう夜の空
天みたし虫が夜空の風鈴や
見えねども使いの虫が呼ぶ夜かな
桃割れど生まるる子なし月たかし
ミニ赤く桃のころがるイタリアン
桃甘し忌日のひとに切りわたす
桃を這う蟻をみのがす闇の夜
桃まわる流星のごとキスと傷
盆の月色も淡さも恨みなし
肉体の若さこぼれて盆の月
夕方は盆の月待ち過ごす日や
今年も狂わざりし盆の月
盆の月魔女の老いたる花のうえ
八月や皮をぬけまた生きるかな
死の唄といつわりの声の八月や
レクイエム雲とたなびく八月や
八月は闇のみ何も風しずか
星いくつきみの忌日過ぐ天の川
ひかりある死のしたくぐる天の川
天の川はるかかなたをわたりけり
愛してる言をながしたる天の川
天の川誰が星空切りて消ゆ
黒壁の立ちてくだける野分かな
鳥ともに地けずりながす野分かな
野分なか捜しものあり山鳩と
道と川ひとつになりぬ野分かな
黙したり野分のあと身生きつつも
蝉なきて落ちる立秋きたりけり
雨打ちし並木めぐりて立秋や
立秋や冷えゆくものあり瞼閉ず
山涼し水透きとおる立秋や
立秋や桃の香りとともにきて
トンボ飛び真っ直ぐ青ひく広島忌
広島忌空満たしたり蝉の声
水の星波のみ聞ゆ広島忌
広島忌白屍地にならびゆく
広島忌天にこだます嘆きかな
目閉じて紅ひろがれり蓮の花
空ともに開きゆきたる蓮見かな
紅蓮や擦りて食べたる根は白し
蓮の葉の吸いあげる水透いており
蓮の実の三個氷に並びたり
種を噛む髪に向日葵かおるかな
種を蒔く向日葵畑なにもなし
向日葵は天を見上げてゆるぎなし
向日葵の首を落として空へ立つ
どこまでも向日葵の眼の見つめおり

