友野雅志の『Tomo俳句』 -33ページ目
喉ながるひとつふたつと秋の雨
秋の雨ひとあしごとに地の声す
秋の雨ガラスの粒で闇満たす
赤ヒール芝ぬらす朝秋の雨
黒靴に知る秋の雨過ぎしこと
色に色秋のかたりにふりかえり
秋かたる闇の真中の静けさや
雨を踏む冷たき朝が秋かたる
あれもあれも死秋かたる朝の青
風の声フルートほそく秋かたる
うつむきて人ひとり行く雨月かな
雨月なら骨まで濡れむ老い衣
キスひとつふたつかさねる雨月かな
雨の月窓がぬれたる夜はしずか
雫落つ朝にかんずる雨月かな
真実や制服の皺の休み明け
眠りは真実や蟋蟀朝あふれ
薬にがし青サルビアと真実や
色と言真実残し風すずし
みあげれば真実秋の風のごと
涼しかれ朝顔見あぐ空幾度
朝顔に見られて娘頰あかし
ラッパ聞く日のごと白ばむ朝顔や
朝顔に語れば病い柔らかし
朝顔の唇触れて軒離る
老いし背に添いてたわめり天の川
天の川嵐のあとの風に鐘
地燃える天の川藍にくだけたり
天の川青い泡罪いやしけり
天の川ながれ新たな露となり
秋の水たましい浮かべ青になり
魚の腹光とどきたり秋の水
泡だちて銀の秋水ながれけり
秋水の青あふれたり玻璃の喉
おくる夜に秋水さらら鳴りにけり
風ながる筆はしる天秋の色
きみの死で風白くなる秋の色
朝六時足からそまる秋の色
秋の色まぶたのなかの星の色
秋の色河原で染まりもちかえる
影去りて清秋枯木かがやけり
秋澄みて風のかたちに花散れり
秋澄みて死にしきみ来る空の底
靴の音鍵盤たたく澄みし秋
歩めどもとどかぬ先で秋澄めり
胸もとのショールふくらむ秋燕
よし河原刃ゆれたり秋燕
秋燕暖簾のけむりのぼる青
巣すぎる風すずしかり秋燕
軒は死をひとつこえるや秋燕

