友野雅志の『Tomo俳句』 -32ページ目
風過ぎる夜に聞こゆる秋の果
秋の果その先は闇深くして
秋の果たちどまり眼を閉じにけり
秋の果少年たちの声あおほそく
空わたる光と闇や秋の果
柿を切る音かなし過去透きしごと
柿を噛むきみの指噛むあまさなり
空と時すべて洗いて柿の色
柿かじるホームを駆ける硬いヒール
なめらかな柿の切りくち外は闇
中也忌や汚れしものを天洗う
骨サラサラ聞こゆ朝の中也忌や
中也忌や軽し子に涙も枯れはてり
中也忌や遠く崖より山羊の声
星が散るかなしきばかり中也忌や
スーツ揺れ時が散り落つ末の秋
髪に風指を過ぎ去る末の秋
末の秋過ぎしひと見る眼を閉じて
末の秋残したままのシャツ白し
身枯れくだけかわく季の音や末の秋
秋雨や地をしずめて身にしみて
耳となり秋雨聴くや人と猫
ヒール濡れこごえ帰りたり秋雨を
天も地もあらうものあり秋の雨
秋雨やラッパの音も濡れにけり
名月やだまりて月をめぐりたり
月わたる雲鳥みいるつめたさや
何もなしあかるい月の下しずか
名月や影のふかさに笑みがあり
名月に背をむけみいる肩の羽
赤き花本にはさみて獺祭忌
獺祭忌無花果雑炊赤ワイン
獺祭忌まだ青き実の手に重く
獺祭忌喉すべる水はねの音
グランドを鳥おもうだけ獺祭忌
秋祭太鼓すぎれば霧の雨
秋祭ばたばた旗のひびきたり
根津くだり山車追う浴衣秋祭
色とりどりすべり浮きたり秋祭
秋祭遠いサイレンに静まりて
足踏み手揉まれ生きたる茜草
夜明けに染まる茜草触れる朝
茜草猫が隠れて揺れる雲
少女らのうつむくかたむき茜草
首にキスこっちをむいてと茜草
深くほる掘りいくごとに秋の虫
秋の虫とどかぬさきに雲白し
都寝る秋の虫夜を満たしたり
サラダ噛む道をみたすは秋の虫
秋の虫ひと声ごとに色めきて

