友野雅志の『Tomo俳句』 -31ページ目
浅漬を噛みたりかりり朝鴉
紅残し浅漬つまむ朝しずか
背をさらに丸め出したる浅漬や
刃を落とし浅漬うすし寒き朝
生きがたし浅漬の厚さかみくだき
キスすれば柿落葉かさり風の音
柿落葉噛みしめあゆむ赤き傘
老いたれば音はフラット柿落葉
柿落葉国の境を越えにけり
柿落葉フォーレレクイエム風ほのか
しろい手の花と浮かべる冬の夜
冬の夜ふりかえる高きに星撒かれ
闇しずか死の寝息ある冬の夜
冬の夜鳥は銀の粉ちらしたり
静けさの底に妻寝る冬の夜
声ゆれる冬紅葉背に揺れにけり
冬紅葉嫗の髪に散る空や
冬紅葉記憶にとどめん二葉かな
水底に死と眠りたる冬紅葉
鳥の声雨がうちたり冬紅葉
抱く肩や凍りたる陶器ひかりたり
きみを抱く世界の凍りを感じたり
耳凍りくちびる硬く天深し
地が凍るながるる血にも氷浮くアルパカの指柔らかな冬の朝
時凍るまばたきの間の冬の朝
冬の朝少女の瞼もかたくなり
目覚めれば冬の朝青く幾重にも
冬の朝死凍り立てる扉かな
目に見えぬ首に巻きたる冬銀河
葉を揺らし向こうへ吹けり冬銀河
握りしは光の手かな冬銀河
冬銀河眼の青き底をながれたり
冬銀河死者の舟ゆく波遠し
銀杏落葉足より時が凍りゆく
銀杏落葉黄いろの光地に満ちて
嫗行く銀杏落葉の波のなか
真一文字銀杏落葉に紅ひかる
夢を染む娘の一夜銀杏落葉
さらさらと氷と灰の冬の星
冬の星ユーラシア染める白と赤
冬の星天をあおあお凍らせて
叫べども声返らざり冬の星
冬の星棺とゆれる鈴の列
唇を赤く濡らせり午後時雨
星砕け時雨ピアノ打つニ短調
時雨白し根津吉祥寺墓黒し
満ちたりて身銀となりゆく時雨かな
