友野雅志の『Tomo俳句』 -30ページ目
有楽町踵は枯野へ向きたがり
陽の赤に鴉とけたる枯野かな
から車枯野をからから駆けにけり
枯野来てまといし襤褸に夜空鳴り
犬となり星見あげたる枯野かな
木枯しや涸れた河を羽根流る
木枯しの痛みが歳を加えたり
木枯しに打たれし笑みと夕べあり
木枯しは鋭きままに海に入り
木枯しや野ざらしになる日に骨の笛
大雪や過ぎしを語る羽の赤
古絹に時忘れたり大雪や
大雪や虫となり抱く陽は氷
大雪来たる鳥終の眠りかな
天ばりっと砕け眩しき大雪や
鮟鱇にはしるするどき光かな
鮟鱇の裂かれて沙羅のほのかなり
鮟鱇の湯気たちあがり父母がおり
刻まれて溶ける鮟鱇泡の波
鮟鱇の眠りのごとし老い深く
冬木立果てまで行けど声遠し
冬木立影とさまよう老いの夢
乳母車ひかり消えゆく冬木立
踏みいけば濡れて揺れたり冬木立
寒昴きみのほくろの胸の上
寒昴野ざらし揺する風青し
寒昴眠りで銀に鯉はねて
鳥の声青にこおりたる寒昴
寒昴ふかい碧さの老いの時
死の星にいのちチラチラ日向ぼこ
妻流民のごと膝抱ける日向ぼこ
日向ぼこ艶あるいのちが幹ながる
鑑真の大の字さびし日向ぼこ
影数え年加えゆく笹子かな
笹子鳴く子どもの声の耳鳴りや
去る笹子声を追いかけ汁粉置く
谷白し笹子の声のさびしさや
門口によべののこりたる神無月
神無月過ぎにし影が語りけり
神無月鳥根づきしごと西明かし
西行を風避けすぎる神無月
捨てられし捨てし孤僧の神無月
冬ざれや韮においける西遠し
いばりも骨も傾く冬ざれに
涸れ川を風とたどりけり冬ざれや
冬ざれに天日銀にくだけ降る
冬ざれや乳あたたかき朝があり

