友野雅志の『Tomo俳句』 -29ページ目
甘蔗刈南向かうや剣の青
甘蔗刈墓のまわりは花の赤
地や海をはらいたるかな甘蔗刈
甘蔗刈歯をたて噛むや石の時
噛めば身を染めたる青や甘蔗刈
玩具屋の子の背懐かしクリスマス
クリスマス大福の塩を噛みしめる
クリスマスナイフは小さな赤を切り
クリスマスおどろくめぐみの夕暮れや
募金箱雲は海へとクリスマス
乾風や大根刺したり台所
ひとを氷らせ過ぎゆけり乾風や
乾風氷ひかりたる鳥の吐気
狂居士のささやきのごと乾風は
乾風手をポケットに海に入り
小豆南瓜冬至の市にならびけり
柚子の陽が街とおりすぐ冬至かな
冬至道おわりでひびく靴の音
手に抱いて小豆ほおばる冬至かな
昼折て夜重ねたる藍冬至
刃の先で湯豆腐落とす三回忌
湯豆腐の葱の白ふりむけば藍
湯豆腐をはさめば潮の引くひびき
湯豆腐ゆるりと夢で柚子の香や
湯豆腐にま白なる箸の鳥のごと
鯛焼きや都に藍のあわさかな
鯛焼き齧る眼は右左動きつつ
ふたつ割る鯛焼きの目は天を見る
鯛焼きをはさむ手の外夜寄せる
鯛焼きの口に残したる今日の赤
北風のくぐるコートの今赤し
北風に口をすぼめる我と魚
北風にながされ鳥と赤い星
北風にななめに案山子は時待てり
身を枯らす翁北風山羊の声
冬の空鑿北より銀に走りたり
冬の空ビルの陰まで浸したり
葉を透かし地に溶け沁みる冬の空
冬の空ひかりの列も凍りたり
驢馬の背に丸く降りたり冬の空
街眠る寝酒ひとくち雲の底
遠灯りひとりひとりの寝酒かな
山白し空凍り寝酒揺れにけり
寝酒あり幾年すぎし枕かな
死より冷ゆる身に白鳥の寝酒かな
マスクあげ冷たき今を感じたり
我がうちの空の漏れくるマスクかな
群れ鴉黒いマスクでならびたり
青魚マスクの顔を見つめおり
言葉呑むマスクのうらの深さかな

