友野雅志の『Tomo俳句』 -3ページ目
あたたかさゆるりとまるくさくらもち
さくらもち噛みてまた来る季節知る
ショールの香のかすかありさくらもち
さくらもちまだ残る手の柔らかさ
さくらもち耳たぶの味夜明けかな
藤の花身まかせたまま散りにけり
頬に藤昨夜の髪のやわらかさ
水面の藤乱れおり夜雨過ぐや
金の尾の水を打ち藤乱れたり
老いし身の思いだす夜の藤の艶
陰は濡れ色乱れたり白躑躅
躑躅水面よりゆらゆら消える
目閉ず躑躅降りつづけて万華鏡
どこまでも赤の躑躅に埋もれ寝る
林檎飴躑躅にほそく透きとおり
ひらに光のみ残れり放哉忌
あたたかき石のやさしき放哉忌
ひとなき道を引かれ行き放哉忌
放哉忌魂は青に染められたし
放哉忌口を閉ざしてまた一日
春昼の陽のたかさで揺れる夢
ひかり降る万華鏡の春昼や
額に空の粒春昼のキス
青い絹人みな纏う春昼や
春昼やひらに蕾のあたたかさ
雲のなか鳥まるくなる霞草
霞草俯く顔をかくしけり
霞草天と地星が揺れており
霞草ひかりにキラキラ川に入り
綿飴のごと霞草が駆けてくる
春夕や紅変えコート裾軽し
春夕魚の目の奥はまだ青
フラミンゴ空燃やしたり春夕や
春夕やバス手すり我染まりけり
春夕やオリーブのごと沈みゆき
月朧河かすむなか渡るかな
月朧紅に触れたり野芥子原
月朧襟もと頰にあたたかく
果実切る黄色の袖や月朧
月朧ゆられしうちにひとりなり
春霰遠きより母聞こえたり
知らぬバス飛びのり屋根に春霰
春霰口をあふれるポップコーン
春霰パラパラだけがきこえおり
春霰地を磨りガラスおおいたり
日めくりに果実の香あり夢見月
夢見月川面も空も青に透け
スカートの組んだ素足や夢見月
夢見月ショールにひかり積もりたり
夢見月ヒール鳴る道露ひかる

