友野雅志の『Tomo俳句』 -2ページ目
衣更脱いで脱いでもきみは空
紅乱れたシャツを干す衣更
葬儀の眼の火照りのこし衣更
キスするところすこし隠し衣更
パステルの頬キラキラと衣更
葉桜の色が満たしたバスに乗り
葉桜ゆらしあゆみくる夏しずか
葉桜擦れすれる衣きみに触れたり
青い指さき触れていく葉桜や
一夜にて身は葉桜に染まりたり
さ

立夏ヒアシンス夜を吸い尽くしけり
立夏雨溢れ母ひとり泣きつくす
割かれ鳥うつくし落ちる立夏かな
立夏走りぬけきみまだ生きんとす
立夏すべての言葉が青く透けたり
季かわり天張り替える春の雷
春雷や花弁それぞれ濡れている
春雷に鎮まり揃って首あげる
春の雷浅緑の地につきささり
春雷やカーテン肩を隠したり
待つことを忘れたころの朧月
朧月千年前の頬を見せ
朧月数万年を睡りたし
朧月揺れつつ盃を渡りけり
あの夜の肌に触れにけり朧月
ヒールの汗も冷えている春驟雨
春驟雨セレナーデから泡の夢
一日すべて星に沁む春驟雨
ポツポツ天がひとりごと春驟雨
春驟雨道の花しんまで濡れており
名忘れし勿忘草に空があり
勿忘草ブルードレスとすれ違い
勿忘草花弁濡らして声聞こえ
唇に勿忘草をうつしとり
勿忘草夢とからだを染めにけり
花時やピンクの風が足染めて
花時やいのちあつめ一気に果てぬ
花時を駈けぬけていく娘かな
花時や天をレースがおおいけり
振りむけば落ちていく夕花時や
春光や天のひらよりあふれけり
春光の大路にいでし赤ヒール
春光や銀を降らせ満たしたり
春光や波ときみ踏む星の音
啄木忌洗う骨ペンのほそさなり
啄木忌厠と海で裾濡らし
捨て忘れたし郷と父啄木忌
邦もキムチの国もかなし啄木忌
恋の染み干せど乾かず啄木忌
あわれあわれなれもあわれ啄木忌

