友野雅志の『Tomo俳句』 -27ページ目
きみの息暖かく水仙揺らし
水仙や飴をふくんでおちょぼ口
水仙溶けし陽だまりの白陶器
毒の指触れる水仙の柔らかさ
水仙やだれかの星が濡らしたり
凍蝶の死後にも雌の甘き香や
凍蝶よ果てまで空は氷たり
凍蝶やどこに帰るか指で指し
凍蝶をポストにはこぶ赤手袋
凍蝶に幼女のいないいないばあ
寒雀地に触れるまで陽をおろし
光撒き路地めぐりゆく寒雀かな
ピッコロ吹きつつ右左寒雀
陽と月と行ってもどりくる寒雀
寒雀声ひとつにて青のなか
夜空から星の礫飛ぶ吹雪かな
青白のモザイクに吹雪砕きたり
吹雪ひと眠らせ星を泡にして
天の青地で天見上ぐ吹雪過ぎ
天地玻璃吹雪明けたる音澄みて
厳寒や空くだく音の銀のごと
千切取られた波が打つ厳寒や
厳寒や陶器の鳥は割れにけり
見上げれば厳寒の刃の走りたり
厳寒の天地白黒に切り裂かれ
空散りて風花髪を飾りたり
胸のなか風花舞えり青い玻璃
風花を歩めばひかりの鳴りにけり
風花やかすかに擦れる天の裾
風花や白い眠りを漂えり
冬の梅青のゼリーに包まれて
寒梅を咥えて染まるふかき紅
寒梅やうつむきながら目を閉じて
寒梅を一度くぐりて戻りたり
寒梅のまだらに赤い陽だまりや
ひそひそと酒の香に揺れ他所の歯朶
歯朶の見えなくなるまでひとりかな
さする人なし触れる歯朶のやわらかさ
老いの朝歯朶を見つめて鴉聞く
歯朶枯れてかさかさ鳴りぬ茜かな
陽だまりの七草に風あらたなり
七草や頰過ぎる風変わりたり
七草や海星宇宙ほのかなり
七草やまだ来ぬ時をあじわえり
七草ひとくち野を駆ける風を聞く
鏡餅子の陰いまだ残りたり
鏡餅小さくなりぬこの年は
鏡餅願いひび割れかわきたり
居ぬひとの来るまで残しぬ鏡餅
地氷るまで黙りたるかな鏡餅

