友野雅志の『Tomo俳句』 -26ページ目
寒鯉や氷のしたで動かざり
寒鯉の尾のひと響き静まれり
青ガラス寒鯉切られ骨ひかり
寒鯉の眼に深き水藍のまま
寒鯉や渋谷の星を尾で揺らし
雪眠らし殺し凍りて夢に入り
重い雪撫ぜる雪今日叩きけり
きみの手の無き時の雪眼を閉じる
雪過ぎて松の実のこるきみにキス
雪踏みて舐める陽の丸みかな
青い馬縞なす色かなし寒波かな
日比谷寒波氷柱透いて手のうえに
寒波なか見送れば背を飲みこめり
寒波来て氷下ゆらり赤緋鯉
星のうえそろそろすすむ寒波かな
眩しさを貼りめぐりらし雪晴や
雪晴に足をおどおど踏み出せり
しずけさや雪晴の道ふりかえる
窓ながれしものあり朝は雪晴
だるまならびて苦笑い雪晴や
今川焼香りに風もふわふわと
今川焼耳たぶつまむ指甘し
ポケットの紅つぼみ握り今川焼
鬼瓦えくぼつくって今川焼
青い月今川焼にあふふふふ
大寒の鳥ひかる息ほそくあげ
大寒や鳥まっすぐ引けり銀の声
大寒の天わたる陽と蕾かな
ポケットに大寒の手の丸みかな
大寒や陽は猫のうえまるく過ぐ
山すべりくだる冷たさ冬菫
冬菫刻みし夜のひらひらと
跨ぎて眩しまがりかどの冬菫
冬菫眠りとぎれる裾にゆれ
冬菫舌をすべりたるミント飴
雪掻きや透きとおるもの地を包み
雪掻きすきみを覆えり氷花
雪掻きや白蕾ともに落ちにけり
雪掻きす星の鼓動の聞こえけり
雪掻きやだるまに小さきキスの跡
雪女郎にぎりしめるは天の袖
鉦ひとつめぐり去りたり雪女郎
雪女郎白帯垂らし門濡らし
氷るキスいまだ立てるか雪女郎
さみしさや抱きて眠らせよ雪女郎
滝凍る透きとおり生静かなり
凍滝や玻璃に滴りし夜の藍
凍滝や天湧くところで蝶消える
凍滝の夜レクイエムに硝子鳴る
凍滝や雫落としてミントの香

