友野雅志の『Tomo俳句』 -25ページ目
白魚はガラスの青に横たわり
大根と静かなる目の白魚や
白魚や死の向こうより見つめおり
定年や白魚まとめ口に詰め
白魚に小さき口がごめんなさい

堅雪やきみをめぐりて青水晶
星を踏むきらきら堅雪藍の空
踏めばきみの心見えるごと堅雪や
堅雪や峰銀となり風を切る
青あおと空堅雪にしみており

立春耳にあたたかくきみ吹けり
天にあるすべてこぼれたり立春や
立春シベリアの藍の淡い泡
立春の玻璃踏むブーツミニ霙
立春へパリパリパリと踏みだせり


生垣の赤まで届きたり節分や
節分に隠れて影が駆けていき
節分や闇沈みきて鬼凍え
節分や過去噛みくだきて飲みこめり
節分にちゅんちゅん雪に雀跳ね

砕氷船みずから砕けりきみを抱く
砕氷船泡だてわたるアンドロメダ
死をくぐれ招くオーロラ砕氷船
砕氷船天一点までのぼりたり
闇のむこう砕氷船の青水尾

何待つや陶器となれり寒椿
路地の寒椿ポケットに拳あり
寒椿触れる手なきままくだけ散り

寒月や氷軋ませ街わたる
黄色にくだけ降り続く寒月や
寒月が裂きたり天地の藍緞帳
寒月や金の花弁が地を覆い
寒月浮きしまま都闇になり

吹雪のなか飛びだしたきや風邪薬
風邪ふたりアーうーんウンウン箒星
熱さまし整腸剤イチゴ風邪薬
マスクなかキス噛みしめる風邪のごと
龍角散葡萄味ゆえ風邪と言い

雪兎うつむき座りおり門の前
雪兎炬燵の尻に尾は無くて
キャンディの赤い涙の雪兎
雪兎四日目逃げて眼を残す
冬の芽の天刺しそのまま陶器なり
冬木の芽ピンク招きたる風と我
冬木の芽あり氷われる音聞ゆ
冬萌えやキスして小さくあたたかく
肩のうえツノだせ歌う冬の芽に

