友野雅志の『Tomo俳句』 -23ページ目
地しずめ空さらさらさら春の雪
厚くかさなり地つつみたる春の雪
春の雪マフラーの綾に銀を編む
春の雪ひらに触れずに消えにけり
地にとけいりて星に沁む春の雪


穴こもり春の雨天でほそく鳴り
ピンクの玻璃肩にひかる春の雨
朝の青くだけ沁みたり春の雨
春の雨しばし痺れる虫と地と
春の雨星ひびきたりまあだだよ


風のごと彼岸にいくつも声聞こえ
彼岸空思いの果てまで青であり
彼岸の野いつかの香り残りたり
ピンク袖と道たがえる彼岸かな
彼岸餅つめて親まねぶつぶつぶつ


散るころにわれも野ざらし西行忌
西行忌ひとつふたつの暖かさ
また一年いきながらえり西行忌
ピンクカーディガンの香ほのか西行忌
いつしか猫のねむるごと西行忌


雪しろや海の向こうの香りして
雪しろに泡だつ天の青と白
雪しろや夜に地を深く削りゆく
雪しろに指を洗いてただ待てり
きみは無し雪しろ海まで白いまま


三一一灰となるまでやひとと星
三一一鳥と人天地うしなえり
三一一地に立つ柱となりにけり
三一一海風のかなた声きこゆ
三一一吾がきく声きみきこえるや


もうすぐですねについ吹けり春一番
春一番星ゆらしつまむミントゼリー
春一番オリーブのうしろに桑の波
葬列のあゆみとまりぬ春一番
春一番魚の眼ひらき雲ながれ


布団より這い出て知れり啓蟄や
啓蟄に嫗と踏みし地が泣けり
啓蟄のひかりに地みな黙りけり
啓蟄を斜めに割いて鳥の声
ただ待てり啓蟄青のしずけさや


鯉の尾の水面くだいてゆれる春
満員電車春どこかにまぎれこみ
猫七匹寝ころぶよこを春すぎる
水掬う手のひら春に濡れており
魚の眼の奥にうつりしあおい春


薔薇の芽のかたむきで夜がすべりくる
薔薇の芽をオイルで焼きたしエスカルゴ
薔薇の芽はやさしくぐりたる友と孫
毒の紅ほのかかおらせ薔薇の芽や
この年も薔薇の芽触れるほそき月



