友野雅志の『Tomo俳句』 -21ページ目
空の波細い魚焼く七夕や
七夕に濡れて流れる闇の夢
七夕や天溢れたる夢の音
七夕や濡れてさまよう影と鳥
七夕やきみの眼にある水の星
星洗い海染まりたり慰霊の日
慰霊の日天しとしとと降りにけり
慰霊の日向こうの風に吹かれたり
慰霊の日天地しずまり草の笛
慰霊の日遠き世より鳥と風
早苗蜻蛉水面の青をゆらしけり
空ぬけて早苗蜻蛉と鯉の赤
音もなく早苗蜻蛉の影高し
早苗蜻蛉いのちを残す水の音
きみはなし早苗蜻蛉のもどり来て
伽羅蕗の夜のそこよりかおりたり
ぬるぬると肌にのこれり伽羅蕗や
伽羅蕗や惹かれてなぜか駅ふたつ
伽羅蕗や戸口を影のとおりすぎ
伽羅蕗やつめたきながれ青き夜
影のぼりゆき雨はねる巣立鳥
よちよちと幼児のより添う巣立鳥
巣立鳥すわりし嫗は目をとじて
さらさらと日差しがきこゆ巣立鳥
巣立鳥ゆらゆら揺れて線となり


カーネーション受けとる手消ゆ目覚めかな
カーネーション影ゆれる道翁の背
カーネーション枯れたる束の乾きけり
カーネーション落とした首の帰り道
カーネーションたがためとなく赤五本


夏浅しいのちのながれ浮かびゆく
いのちひろがる地のうえや夏浅し
ふむ影のうすさすずしさ夏浅し
夏浅し陰の深きに過去があり
夏浅し声のころころころがれり


夏来たる頰を緑が走りたり
水底を陽のわたりたり夏来たる
空に鳥藍にそまりたり夏来たる
アイスクリームブルーとピンク夏来たる
学舎に足音軽し立夏かな


陽もひとも坂くだりゆく四月尽
過ぎさりし時に色あり四月尽
四月尽まためぐりくるか淡き青
四月尽身を横たえる風みどり
四月尽天の音聞く昼寝かな


身をまかせ揺れて終えたり藤の花
藤の棚ふかれる髪の藍の香や
藤の波星の吐息のあたたかさ
水揺れて藤波うてり鯉の音
老いの踏む地を覆いたる藤の花



