友野雅志の『Tomo俳句』 -19ページ目
雛と我いづれ流すか鏡見る
娘無く老いるとも雛細きまま
雛の唄節で止まりて海止まる
雛出せば声聞こえくる家捨てる
あられつまみに酔う夜の白い雛
ネーブルに噛みつき吸う十五歳
カリフォルニア香るネーブル二個の夜
臍のキス隠しバス待つ手にネーブル
ネーブルを並べて眠る午後三時
ネーブル噛む歯のかがやきと丸い紅
軒借りてカレーおかわりす安吾忌や
安吾忌をのぼる鳥リルケ歌いけり
安吾忌に捨てしもの持たぬものならぶ空
安吾忌やシルクと砂漠の風かおる
安吾忌にゆるされし鳥青ガラス
シャローム霙荒地に沁みる夜
きみのこえ霞ゆらしてシャローム
シャローム、焼野の空にひびきたり
死してなおミモザうたえよシャローム
シャロームわれきみまだ雨水に立てり
春めいて口笛角よりのぼりたり
春めいてメロディ聞ゆ川面かな
声があり春めく空にシルクゆれ
春めけばポルトガルの風吹きぬけて
裾に春めくリズムあり天見あぐ
寒明や星の矢天から降りにけり
天のうえひかり見えたり寒明や
寒明や藍の影二歩先を行き
寒明にキス天のレース揺れにけり
寒明や地に罅いれてヒール行く
角曲がる風あたたかし立春や
襟をあけ立春の陽を肌に受く
立春の空透きとおるきみの窓
立春にミニまっすぐあゆみゆく
網タイツ鳥の声とまる立春や
節分や闇とひかりの間をあゆむ
節分に声聞こえたり鬼となれ
節分に凍りし空のくだけちり
溢れる豆噛む節分の星見えず
幼き声あちこちあがる節分や
大寒や貫く剣の透けており
大寒や凍りし礫が鳥を打つ
大寒に抱く胸無くて石黒し
大寒の天裂きのぼる白い指
あしもとの影も罅いる大寒や
実朝忌歌透きて天たかきまで
子よ生きよ祈りて覚めぬ実朝忌
空も地も銀に凍れる実朝忌
実朝忌泣かせしひとよ我を刺せ
鳥鳴けば乳首の香あり実朝忌

