友野雅志の『Tomo俳句』 -16ページ目
春の闇迷いたどるは闇の香か
春闇や行き先なしの旅出する
枕なかかおる春闇これで良し
春闇に転げおちゆく深いキス
春闇にわが闇とけてひとつなり
指おけば新芽やわらか乳かおり
みどりごのごと夜明けて新芽伸び
新芽の根もとに残るまま蝉骸
新芽に露ひとつひとつが陽となりて
顔埋める頰と袖新芽の色になり
さきからは風のまま生く春埃
春塵笑顔おおって消えにけり
足吹きさらう千年の春埃
手の隙に春塵天竺の香のほのか
花冷えを抱いて寝るゴッホの藍の夜
花冷えや金散る波に流れおる
花冷えの都の塔は銀になり
花冷えや月の白さの地球浮く
花冷えにバイクムラサキの熱跨ぐ
昼の鳥二本そのまま春の雷
銀写真の顔になり春の雷
ひらより薬いっきに落ちる春の雷
春の雷水晶の天に目をふさぎ
春の雷花すべて負いてまっすぐに
戦あり天染めつづく春雨は
天と地とひとつに濡らし春の雨
春雨の傘には春の模様あり
きみの名で鳴る春雨は夜に鳴る
春雨の赤い斑紋鯉くぐる
星桜西行僧衣に陽斑ら
病みたれば花満開の夢のなか
春の夢枕の花に顔うずめ
残酷な四月花と死ともに降る
また一度さめても花を夢にみて
ももいろのオールの先から罅はしる
音ひとつ地が割れて水あおきまま
天落ちて水まえの色今の色
ひとの影消えそのままの天地あり
春夏秋冬地はうけいれる名は訊かず
島唄や清明の空にファルセット
清明の陽へ昇りゆく虫の群れ
清明や誰とも会わぬ丘の道
清明に枕もと来よ赤い花
背あかるし清明くぐる陰の色
木蓮ののぼりゆくさき天頂に
紫を脱ぎて木蓮透きとおり
蝶がとぶ木蓮の耳のいろどり
白鳥の天のぼるごと木蓮は
木蓮の天とブラウスに神聖文字
