友野雅志の『Tomo俳句』 -11ページ目
梅雨の浅草で一粒を受ける
梅雨と梅雨合間をぬって逢引す
蛇乱れ道滑りつつ梅雨を来る
天溢れ地で波打てり梅雨の水
暴れる梅雨山肌で捩れる蛇

都の底をサングラスでかけぬける
きみの隙間の炎見ゆサングラス
サングラス天の劔で割れにけり
光の国サングラスで行けるかな
過去も未来も見えないサングラス
数千年の陽杏子に詰まっている
瓶のなか杏子夜中に泳ぎだす
杏子金の卵を皮ままかじる
ポケットであたためても杏子は杏子
杏子キスの香のただよう首まわり
死んだきみは好きだろか伽羅蕗を
ぬるぬると記憶から出る伽羅蕗や
駅みっつもどる伽羅蕗に母隠れ
伽羅蕗の音たて折れる祖先かな
伽羅蕗をつめたい青に染める水
麻婆豆腐四川から夏の風
夕焼けとひとつ色麻婆豆腐
麻婆豆腐キスの辛さも溶けている
紫陽花を煮詰めたり麻婆豆腐
麻婆豆腐昨日明日見分けれず
枇杷と月天にひとつと手にひとつ
火のごとき枇杷腕伸ばし届きたり
水風船枇杷ポケットに握りつつ
枇杷地球の秘密木からぶらさげり
父のごと枇杷は金色川向かい
梅雨晴や空銀粉に砕け降る
梅雨晴が乱反射するきみの眼に
梅雨晴やヨブの背のごと樹を撫でる
ソーダ水の梅雨晴を鳩わたり行く
青ガラスの馬梅雨晴を駈けぬける
牛蛙わたしを待つか傘もなく
牛蛙わたしを見つつ蝿を飲む
雨に洗われ三日目まだ牛蛙
雨と現れ雨と消え牛蛙
牛蛙モウと啼けよと幼女のモウ
魂揺れるごと梯梧揺れ慰霊の日
慰霊の日鳥海より生まれおおう
慰霊の日神の風地にそよかなり
網に添い影立ちてあり慰霊の日
三線と梯梧谺す慰霊の日
桑の芽をドレスで染める夜の霊
冠の桑の芽濡らし木霊立つ
一夜のキスのごと朝桑の芽落ち
桑の芽を咥えし鳩は海向かう
桑の芽を切り落とす陽の刃かな

