国民年金法による障害基礎年金の学習においては、次の⑴~⑹の6種類の障害基礎年金のうち、少なくとも⑴~⑷に関しては盤石にしておかなければなりません。

 

⑴ 一般的な(原則的な)障害基礎年金
⑵ 事後重症による障害基礎年金
⑶ 基準障害による障害基礎年金
⑷ 20歳前傷病による障害基礎年金
⑸ 平成6年改正法附則第4条の経過措置による障害基礎年金
⑹ 平成6年改正法附則第6条の特例措置による障害基礎年金

⑴~⑷の障害基礎年金については、改めて解説する必要もないでしょうから、ここでは⑸と⑹について解説しておきます。
 

まず、⑸と⑹の名称そのもの(経過措置だとか特例措置だとか)は、社労士試験の設問文に出てくることはないので、気にすることはありません。


設問文を読みながら、どちらを指しているのかを区別することができればよいのです。

【1】平成6年改正法附則第4条の経過措置による障害基礎年金
⑴ 前提となる知識(3年失権制)
平成6年11月9日前の障害基礎年金及び障害厚生年金においては、障害の状態が「3級」の障害状態にも該当することなく(3級不該当)、その軽減された状態のまま3年を経過したときは、当該3年を経過した日に障害基礎年金又は障害厚生年金の受給権が消滅することとされており、この制度を「3年失権制」と呼んでいました(3年失権制は昭和48年改正により新設されたものですが、平成6年11月9日に廃止されました)。

平成6年11月9日前は、一度失権してしまった以上、同一の傷病が再発したとしても、再び障害基礎年金等の受給権を得ることはありませんでした。
 

しかし、特に内部障害精神障害の場合には、3級の障害状態不該当となり、3年以上経過した後に、再び1級又は2級の障害状態に再発悪化する事例が生じていました(障害厚生年金の受給権が消滅した場合には、3級の障害状態に再発悪化した場合を含む)。

 

そこで、このような者を救済すべく、平成6年に法改正されました(平成6年11月9日施行)。


⑵ 支給要件
平成6年11月9日前に「3年失権制」の規定により障害基礎年金(旧国民年金法による障害年金を含む)の受給権が消滅した者に係る傷病が、平成6年11月9日から65歳に達する日の前日までの間に障害等級1級又は2級の障害状態に該当した場合には、障害基礎年金の支給を請求することができます。

 

平成6年11月9日前に「3年失権制」の規定により障害厚生年金(旧厚生年金保険法による障害年金を含む)の受給権が消滅していた者は、失権に係る同一の傷病が再び障害等級1級、2級又は3級の障害状態に該当していれば、平成6年11月9日から65歳に達する日の前日までの間に、障害厚生年金の支給を請求することができます。

⑶ 請求年金
この経過措置による障害基礎年金及び障害厚生年金は「請求年金」であり、請求した日に受給権が発生しますので、請求をした日の属する月の翌月から支給が開始されます。
 

すなわち、請求年金は、遡及して支給されることはないため障害等級に該当したと思われるときは、なるべく早く請求すべきです(65歳になってしまうと請求することができなくなってしまいます)。


【2】平成6年改正法附則第6条の特例措置による障害基礎年金
⑴ 支給要件
昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの間に「初診日」のある傷病により、保険料の拠出をしていながら障害等級1級又は2級の障害状態に該当することとなったものの、旧法の支給要件を満たさないために障害年金を受けられなかった者でも、新法における支給要件が適用されていれば障害年金が支給されていたであろうことはあります。

※ この「特例措置による障害基礎年金」の規定は、厚生年金保険法には存在しない規定ですので、「初診日」は必ず「昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの間にあること」が絶対条件となります。

⑵ 旧法による障害年金の支給要件の厳しさ

例えば、旧国民年金法による障害年金は「初診日の属する月前1年間がすべて保険料納付済期間」でなければ支給されることはありませんでしたし、また、旧厚生年金保険法による障害年金は「初診日の属する月前の厚生年金保険の被保険者期間が6か月未満」であるときは、障害年金は支給しないものとされていました。

 

以下、昭和60年度当時における旧障害年金の支給要件を掲げておきます。

 

≪旧国民年金法における障害年金の支給要件≫

【旧国民年金法第30条第1項】

⑴ 初診日において被保険者であった者については、初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。

① 初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか、又はその保険料納付済期間が5年以上であり、かつ、その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。

② 初診日の属する月前における直近の基準月(1月、4月、7月、10月をいう。以下同じ)の前月までの被保険者期間が3年以上であり、かつ、その被保険者期間のうち最近の3年間が保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていること。

③ 初診日の属する月前における直近の基準月の前月までの通算年金通則法第4条第1項各号に掲げる期間を合算した期間が1年以上であり、かつ、同月までの1年間のうちに保険料納付済期間以外の被保険者期間がないこと。

④ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき、第26条に規定する要件〔老齢年金における受給資格期間25年以上を満たしていること。以下同じ〕に該当していること。

⑵ 初診日において被保険者でなかった者については、初診日において65歳未満であり、かつ、初診日の前日において第26条に規定する要件に該当したこと。

 

≪旧厚生年金保険法における障害年金の不支給要件≫

【旧厚生年金保険法第47条第4項】

障害年金は、当該傷病に係る初診日の属する月前の通算年金通則法第4条第1項各号に掲げる期間を合算した期間が6箇月未満である者には、支給しない。

この障害年金不支給要件の規定を「6箇月条項」と呼んでいました。


⑶ 平成6年法改正の趣旨

しかし、新法における障害基礎年金の原則の支給要件は、例えば、保険料納付要件(3分の2要件)など、旧法の時代に比べれば非常に緩和されたものですので、障害等級1級又は2級に該当する者は、特例措置(救済)として「平成6年11月9日から65歳に達する日の前日までの間」に障害基礎年金(20歳前傷病による障害基礎年金)を請求できるようにしました。


⑷ 請求年金
この特例措置(救済)による障害基礎年金は「請求年金」であり、請求した日に受給権が発生しますので、請求をした日の属する月の翌月から支給が開始されます。過去に遡及して支給されることはありません。

⑸ 要注意事項
① この特例措置(救済)による障害基礎年金を請求するための保険料納付要件は、旧法当時の初診日の前日における保険料納付要件が「3分の2要件全加入期間のうち保険料滞納期間が3分の1を超えないこと)」を満たしていることが必要です。

 

※ あくまで救済措置(特例)としての障害基礎年金ですから、新法における経過措置としての令和18年4月1日前の初診日における「直近1年間要件」を使うことができないことに十分気をつけてください。


② この特例措置(救済)による障害基礎年金は「20歳前傷病による障害基礎年金とみなす」こととされています。

 

昭和61年4月1日前(旧法時代)に初診日があるということは、20歳前(公的年金加入前)に初診日があることと同視できるものと考えられたからです。


したがって、本人の所得額によって、その特例(救済措置)による障害基礎年金の額の「全部又は2分の1」が支給停止になることがありますし、刑事施設等に拘禁されているときや日本国内に住所を有しないときは、その間、支給停止になります。
 

つまり、「20歳前傷病による障害基礎年金に係る支給停止事由」が適用されることとなりますので、社労士試験に出題される頻度は少ないですが、本当に気をつけてください!

 

実務的には、この特例措置による障害基礎年金を諦めている人は、思っているほど少なくないような気がします。旧法時代に初診日があって障害は残っているけれど、真面目に保険料を納めてきた人で、まだ65歳になっていない人は諦めないで請求してみてください。