国民年金法第18条の2第2項にあるように「毎年3月から翌年2月までの間」において端数処理されてきた「1円未満の端数」が合計され、2月支払期である2月15日(原則)に支払われる年金額に加算されます。

 

【国民年金法第18条の2】 (2月期支払の年金の加算)

①前条第3項の規定による支払額に1円未満の端数が生じたときは、これを切り捨てるものとする。

②毎年3月から翌年2月までの間において前項の規定により切り捨てた金額の合計額(1円未満の端数が生じたときは、これを切り捨てた額)については、これを当該2月の支払期月の年金額に加算するものとする。

 

※平成28年度の社労士試験においては、上記「毎年3月から翌年2月まで」を「毎年4月から翌年3月まで」と引っ掛けて出題していますので、これからも気をつけてください。

 

社労士試験を考慮し、令和6年度の老齢基礎年金の満額を用いて、この端数処理の仕組みを考えてみましょう。

 

各支払期(偶数月)に支払われる年金額は…

816,000円÷6=136,000円

あら、これでは1円未満の端数が生じませんね。

 

ということで、昭和31年4月1日以前生まれの者についての老齢基礎年金の満額を用いて計算してみましょう。

813,700円÷6 =135,616.666666666···

1円未満の端数は、国民年金法第18条の2第1項の規定により切り捨てますので、2月以外の各支払期に支払われる年金額は「135,616円」となります。

 

さて、これを6倍して年額に換算すると…

135,616円×6=813,696円

となり、「4円」だけ少なくなってしまいます。

 

平成27年10月1日の被用者年金一元化法施行前の国民年金や厚生年金保険においては、このままで終わっていました。


まあ、老齢基礎年金の満額については「100円未満の端数を四捨五入」して算出するのですから、1人の年金受給者にとってはたいしたことはないとも思えますが、年金を支払う国側の立場としては、かなりの金額が浮くことになります。

 

ところが、公務員等が受け取る「共済年金」においては、2月支払期に1円未満の端数の加算を行っていました。

 

さすが公務員等、わずか1円でも損したくない気持ちがよく表れています…、というわけではなくて、そもそも共済年金は国の債務ではないと解されていますので、端数計算法が適用されないからなんですよ。

 

そこで、被用者年金一元化法の施行により、国民年金法や厚生年金保険法においても、その共済年金の仕組みを借用して適用させることにしました。

 

日本年金機構では、1円未満の端数については、小数点以下8位未満を切り上げ、小数点以下第8位まで求めているようです。 

0.66666667円×6回分=4.00000002円

ここで1円未満の端数を切り捨てますので、「4円」を加算すれば老齢基礎年金の満額とぴったんこ一致することとなり、万々歳というところです。

 

しかしですね。ここで、よ~く考えてみてください。 

 

4月15日(原則)に支払われる年金額は、前年度の年金額が支払われますよね。

ですから本当は、そのことを考慮して計算しなければなりません。

 

実際に令和5年度における既裁定者の老齢基礎年金(満額)で計算してみると、各支払期に支払われる年金額に1円未満の端数は生じません。

 

ということは、令和6年度における1円未満の端数の端数の合計額は…

0.66666667円×5回分=3.33333335円

ここで1円未満の端数を切り捨てますから、「3円」の加算となるため、老齢基礎年金の満額に「1円」だけ不足することになってしまいます。

 

これは、年度単位で年金額をしているところ、支払期月は後払いになっていることから生じるカラクリです。令和6年度の老齢基礎年金の満額のうち、その6分の1は、令和7年度に突入した令和7年4月15日に支払われれますから、このことも考慮しなくてはいけません(この場合の1円未満の端数は、令和8年2月支払期における加算の対象となります)。

 

~最後に~

さて、今までは、老齢基礎年金の「満額」で計算をしてきました。

でも、老齢基礎年金の満額を受給している人は多くありません。

 

たいていの年金受給者は、納付月数が足りないなどの理由で、満額よりは少ない額の老齢基礎年金を受給しています。

この場合の減額された年金額の端数処理は、「1円未満の端数を四捨五入」ですから、少し状況が変わってきます。

 

また、老齢基礎年金、付加年金、老齢厚生年金、加給年金額は、それぞれにおいて端数処理をしますので、実務上は、それほど簡単な話ではありません。

 

なお、社労士試験における注意点ですが、全額支給停止等により2月支払期に支払われる年金額がない場合には、端数額の加算は行われません(その後に支給が開始されたとしても、その後の支払期に端数額の加算が行われることはありません)。


いよいよ、令和6年度社労士試験まで半年余りとなりました。そろそろ冬の寒さも緩み、気温も徐々に上がってきますから、受験勉強の質も徐々に上げていきましょう❗️