平成最後の、記念すべき平成30年度(第50回)社会保険労務士試験講座の「白書・一般常識対策講座」のテキストに記載しなければならないと考えているのが、「人口ボーナスと人口オーナス」の問題です。

 
【1】高度経済成長期からバブル経済期まで
例えば、昭和30年から昭和48年までの経済成長率は年度平均9.1%、平成2年のバブル経済期までの経済成長率は年度平均4.2%です。
およそこの36年間の企業成長を支えてきたのは「人口ボーナス」です。
 
★「人口ボーナス」とは、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)が増加して子どもと高齢者が少ない人口構成になっていて、豊富な労働力を経済成長に集中することができる社会現象です。「多産多死」社会から「少産少死」社会に急激に変化すると生じる現象だと言われています。日本では、団塊の世代(多産社会)の後に急激に少子化して「少産少死」社会になり、昭和40年頃から本格的な「人口ボーナス」状態になりました。
 
人口ボーナス」は、人類史上初めて日本で生まれた現象です!
 
【2】人口オーナスへの状況変化
さて、「人口ボーナス」社会が生じると、次は必ず「人口オーナス」社会に移行します。
 
★「人口オーナス」の「オーナス(onus)」とは「重荷・負担」という意味です。高齢者が増え少子化のために、生産年齢人口が減少する人口構成のため、経済成長の重荷・負担になる社会状況をいいます。人口オーナス状況で経済成長することは難しく、雇用状況も厳しいものがあります。
以上は、社労士試験対策としては用語を知っていればよいものと思われます。
 
さて、急に話題が変わりますが、Twitter のほうで、年金改正案についてかなり誤解されているTweet がありましたので…。
 
【3】「年金カット法案」は無知のスローガン
社会保障は、経済が成長しなければ厳しくなっていきます。国会でマクロ経済スライドの仕組みを法改正しようとしたとき、野党は「年金カット法案」というスローガンで政府を批判していました。 
ところが、 なんとマスコミからの批判により、野党は自分たちの主張が誤りであることを認める羽目になります。政府を批判していた自分たちのいう「年金カット」とは、現役世代や子どもや孫たち、曾孫たちなどの年金をカットすることを意味していたからです。
日本退職者連合ですら、自分たちの年金給付水準を守ることだけが社会保障を健全なものにするものではないと、「年金カット法案」の名の下に反対していた元の主張(年金給付水準を維持せよとの元の主張)を見直したほどです。
 
【4】社労士試験の受験講義では?
社労士試験受験講座では、65歳で老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給権を取得した者が、例えば、73歳で実際に支給繰下げの申出をした場合、法律上は70歳で支給繰下げの申出をしたものとみなされると教えます。増額率の最高限度率である42%を適用して、遡って支給するようにしているのですね (支給率としては、65歳時に支給されるはずの年金額の142%)。
しかし、平成30年1月現在で79歳の人が支給繰下げの申出をしたら、支分権の消滅時効の5年が適用されますから、5年前までの74歳の分からしか遡って支給されません。増額率は最高率が適用されるとしても…。
 
でも、さっと頭に浮かびますか?
①高在老が適用されていたはずの者が、老齢厚生年金の支給繰下げの申出をした場合、何を基準にして増額率を計算しますか?
②平成14年4月1日前の期間は、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に支給繰下げの申出をしなければならなかったところ、平成14年4月1日から平成19年3月31日までは、老齢厚生年金の支給繰下げの制度は廃止され、繰り下げるのであれば、老齢基礎年金しか支給繰下げの申出ができませんでした。
③平成19年4月1日以降は、老齢基礎年金だけ、又は老齢厚生年金だけ、あるいは老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を同時に繰り下げることができるようになりました。この老齢基礎年金には在職支給停止という仕組みはありません。
④上記の79歳の人の話ですが、昭和16年4月1日以前生まれなのですから、「年単位の増額率」が適用されますよね。例えば、老齢基礎年金の受給権を取得してから5年を経過して支給繰下げの申出をすると、最高増額率が88%という、現在の最高増額率42%とは比較にならないほど高い増額率になっていましたね。
 
※Twitter で、まあまあ年金のことを知っているらしい大学関係者が、 70歳を過ぎて繰下げ支給をした場合も増額率を42%を超えて継続することを検討するとのニュースを批判していましたが、年金制度のミクロの細かさは、そうそう簡単に理解できるものではありません。 誤解されるのも仕方ないでしょう。
 
とまあ、そうは言っても、確かに老齢基礎年金や老齢厚生年金の支給繰下げをするのは、かなり勇気が必要です。自分がいつまで生きられるのか分かりませんからね。
う~ん、私もそろそろ老齢基礎年金及び老齢厚生年金の支給繰上げであれば、考えるような年齢になってしまいました😢💦
 
★平成29年12月に公表された『厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、新規裁定者で支給繰下げの申出をした人の割合は、微増してはいますが、2.7%ということです。
 
<追記>
社会保険労務士は、労働法制及び社会保障法制の専門家です。合格後は、社会保障のミクロとマクロをしっかり説明できるように勉強しておいてください。10年ほど前までは、一部の経済学者が「公的年金を積立方式にせよ!」と主張し、年金受給額の世代間格差を煽っていましたが、あっという間にいなくなってしまったことを覚えておきましょう。本業を忘れて他のことに手を出すと、一般の人たちを不安にするだけです。積立方式にしたとしても少子高齢化の影響を受けることは、経済学者なら分かるはずです。公的年金制度で世代間の年金受給額の格差問題が起きているのは、日本とアメリカだけです。