【年金太郎の年金記録等】
昭和36年4月1日生まれの年金太郎(男子)は、64歳から特別支給の老齢厚生年金の支給を受けていたが、令和8年3月31日をもって65歳に達したため、当該特別支給の老齢厚生年金の受給権が消滅し、新たに老齢基礎年金と(本来の)老齢厚生年金の受給権を取得した。
年金太郎は、老齢基礎年金については繰下げ受給をすることとし、令和8年度以降、当分の間は老齢基礎年金の支給を受けないこととしたが、老齢厚生年金は繰り下げることなく受給することとして、日本年金機構に裁定請求をした。
令和8年5月13日、日本年金機構から「年金決定通知書・支給額変更通知書」が送付されてきたので、中身を見ると、次のような年金記録等が印字されていた。
⑴ 平成15年3月までの期間に係る平均標準報酬月額は「280,000円」(被保険者期間の月数は「140月」)
⑵ 平成15年4月以降の期間に係る平均標準報酬額は「460,000円」(被保険者期間の月数は「70月」)
なお、年金太郎は、60歳に達した月以後「10月間」だけ厚生年金保険の被保険者となったことがあるが、それ以後は厚生年金保険の被保険者となったことはなく、国民年金の任意加入被保険者になったこともない。また、20歳に達する月前において、厚生年金保険の被保険者になったこともない。
以上の事例から、令和8年度において、年金太郎に支給される老齢厚生年金の年額を求めなさい(従前額保障を考慮する必要はない)。
《参考数値》
昭和31年4月2日以後生まれの者(新規裁定者)に係る国民年金法第27条本文の規定による改定率(令和8年度)は「1.085」となっているので、参考にしなさい。
【計算事例】
①平成15年3月までの期間に係る報酬比例部分の額
280,000円×7.125/1000×140月=279,300円
②平成15年4月以降の期間に係る報酬比例部分の額
460,000円×5.481/1000×70月≒176,488円
③経過的加算額(差額加算)
年金太郎が60歳に達した月以後10月間において厚生年金保険の被保険者となっていた期間については、経過的加算額(差額加算)として、報酬比例部分の額に加算されます。
※ 20歳未満及び60歳以上で厚生年金保険の被保険者となった期間は、老齢基礎年金においては「合算対象期間」となり、老齢基礎年金の額には反映されませんが、「経過的加算額」(年金実務では「差額加算」と呼称することが多い)として反映されます(ただし、経過的加算額に反映される厚生年金保険の被保険者期間としては「480月」が上限です)。
★ この計算において特に気をつけなければならないのは、20歳以上60歳未満における厚生年金保険の被保険者期間の月数が「200月(=140月+70月-10月)」であることです(老齢基礎年金相当額の計算において用いるからです)。
✅経過的加算額=定額部分の額-{老齢基礎年金の満額×昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数/480(加入可能年数×12)}
※ {老齢基礎年金の満額×昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数/480(加入可能年数×12)}の部分の額については「老齢基礎年金相当額」と呼ぶこともあります。
✅定額部分=1,628円×改定率×(1.000~1.875)×被保険者期間の月数(上限480月)
※(1.000~1.875)について、昭和21年4月2日以後生まれの者は「1.000」とします。
{(1,628円×1.085×1.000)×210月}-{(780,900円×1.085)×200月/480}
=(1,766円×210月)-(847,300円×200月/480)
=370,860円-353,042円
=17,818円
ということで、①~③をすべて合算すると、「473,606円」が、令和8年度において、年金太郎に支給される老齢厚生年金の年額となります。
※ 年金太郎に係る厚生年金保険の被保険者期間の月数が「240月未満」ですので、年金太郎に生計を維持する65歳未満の配偶者や、18歳年度末までの子、障害等級1級又は2級の障害の状態にある20歳未満の子がいたとしても、老齢厚生年金に「加給年金額」は加算されませんね。
ただし、老齢厚生年金の受給権を取得した当時において被保険者期間の月数が240月未満ですので、現在65歳である年金太郎が、再就職をして厚生年金保険の被保険者となり、在職定時改定又は退職時改定された当時において被保険者期間の月数が「240月以上」となっていれば(あと30月以上の厚生年金保険の被保険者期間が必要です)、加給年金額が加算される可能性は、全くないとは言えません。
なお、老齢厚生年金における配偶者加給年金額には「特別加算額」が含まれていることも、絶対に忘れないようにしておきましょう。
一方、これに対し、障害厚生年金1級又は2級に係る配偶者加給年金額には、特別加算額は含まれません。
それでは、皆さん、お疲れさまでした!!