2026年(令和8年)1月30日、総務省統計局から「労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)平均」が公表されました。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/youyaku.pdf
国家試験としては、社会保険労務士試験や公務員試験(特に労働基準監督官試験)などがおおいに関係してきますね。今回は、労働力調査(基本集計)の結果を統計用語ごと簡単に振り返っていくことにします。
【1】就業状態の分類体系
まずは、就業状態の分類体系をしっかり確認しておきましょう。
労働力調査において「就業状態」とは、「15歳以上人口」について「月末1週間(12月は20~26日)に仕事をしたかどうかの別」によって、上図のように分類します。
このように、1週間という短い調査機関に限定して就業状態を分類する方法を「アクチュアル方式」又は「労働力方式」といい、このような考え方は、国際労働機関(ILO)による国際基準となっています(ILO基準)。
※ 一方で、期間を定めずに「ふだんの状態」で就業状態を分類する方法(例えば、就業構造基本統計調査など)は、一般に「ユージュアル方式」又は「有業者方式」と呼びます。
日本の「15歳以上人口」は、2026年(令和8年)1月1日現在の概算値によると、「1億958万人」となっています。
【2】完全失業者数と完全失業率
■「完全失業者」とは、以下の3要件をすべて満たす者をいいます。
① 仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者とならなかった)
② 仕事があればすぐ就くことができる
③ 調査週間中に求職活動をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)
🔽 2025年(令和7年)平均の完全失業者数は「176万人」と、前年(令和6年)と同数
🔽 2025年(令和7年)平均の完全失業率は「2.5%」と、前年(令和6年)と同率
なんと、前年(令和6年)平均と同数&同率なんですね。
国家試験対策としては、失礼ながら、”ニコニコ(2.5%)居直る(176万人)完全失業者” とでも覚えておきましょうか。
○ 完全失業者を男女別にみると、男性は102万人と1万人の増加、女性は74万人と2万人の減少
○ 完全失業率を男女別にみると、男性は2.7%と前年と同率、女性は2.3%と0.1ポイントの低下
○ 完全失業者を求職理由別にみると、「勤め先や事業の都合による離職」は22万人と前年と同数、 「自発的な離職(自己都合)」は75万人と前年と同数、「新たに求職」は48万人と前年と同数
⇒なんと、求職理由も前年(令和6年)と同数なのですが、「自発的な離職(自己都合)」が最も多いとだけは覚えておきましょう。
【3】就業者数について
■ 「就業者」とは、「従業者」と「休業者」を合わせたものです。
○ 「従業者」とは、調査週間中において、収入を伴う仕事を少しでも(1時間以上)した者をいいますが、ここでいう仕事とは、労働の対価として、給料、賃金、 諸手当、内職収入などの収入を伴う仕事であり、調査週間中に1時間以上の仕事をしていれば、仕事の内容は問いません。
○ 「休業者」とは、仕事を持っていながら調査週間中に病気や休暇などのため仕事をしなかった者のうち、
① 雇用者(その仕事が会社などに雇われてする仕事である場合)で、仕事を休んでいても給料や賃金(社会保険給付を含む)の支払を受けている者又は受けることになっている者
② 自営業主(その仕事が自分で事業を経営して行う仕事である場合)で、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない者をいいます。
※ 雇用者については、年次有給休暇中にある者や育児・介護休業、産前産後休業の期間中の者も、普通は「休業者」です。一般的には「就業者=自営業者も含めて働いている者」というイメージになるでしょうか。
🔽 2025年平均の就業者数は「6828万人」と、前年に比べ47万人増加(5年連続の増加)
○ 就業者を男女別にみると、男性は3702万人と3万人の増加、女性は3126万人と44万人の増加
○ 「就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合)」は62.2%と、0.5ポイントの上昇(5年連続の上昇)。
⇒男女別にみると、男性は69.8%と0.2ポイントの上昇、女性は55.1%と0.9ポイントの上昇
○ 15~64歳の就業率は80.0%と0.6ポイントの上昇。
⇒男女別にみると、男性は84.6%と0.1ポイントの上昇、女性は75.3%と1.2ポイントの上昇
○ 「雇用者数」は「6185万人」と、62万人の増加(46か月連続の増加)。
⇒男女別にみると、男性は3306万人と13万人の増加、女性は2879万人と49万人の増加
※ 「雇用者=企業等に雇用されて働いている人」というイメージですが、「労働基準法上の労働者」に限られるものではなく、役員(取締役)等の「労働基準法上の使用者」や公務員等も含まれます。そのため、「非正規雇用者等の割合」を示す場合には、役員等を含めるのは不合理なので、「役員等を除いた全雇用者に占める非正規雇用者の割合」で示すのが普通です。
【4】産業別の就業状況について
🔽 2025年平均の就業者のうち、前年に比べ最も増加した産業は「医療、福祉」
○ 就業者を産業別にみると、「医療、福祉」は947万人と25万人の増加、「サービス業(他に分類されないもの)」は482万人と16万人の増加、「情報通信業」は302万人と10万人の増加
○ 一方、「卸売業、小売業」は1029万人と16万人の減少、「製造業」は1033万人と13万人の減少
※ 社労士試験においては、前年に比べ最も減少した産業として「卸売業、小売業」を知っておくのも必要かもしれません。
【5】正規職員・従業員と非正規職員・従業員数について
🔽 2025年平均の正規の職員・従業員数は「3708万人」と、前年に比べ54万人増加(11年連続の増加)
🔽 2025年平均の非正規の職員・従業員数は「2128万人」と2万人増加(4年連続の増加)
○ 正規の職員・従業員を男女別にみると、男性は2367万人と12万人の増加、女性は1341万人と42万人の増加
○ 非正規の職員・従業員を男女別にみると、男性は678万人と4万人の減少、女性は1450万人と6万人の増加
○ 役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は「36.5%」と0.3ポイントの低下
※ 一般に、「職員」とは公務員を、「従業員」とは民間雇用者を指します。
さて、非正規の職員・従業員数も男女計では増加していますが(男性は減少、女性は増加)、正規の職員・従業員数は男女ともに増加しており、全体としては「11年連続の増加」となっています。つまり、正規の職員・従業員の数は、全体として ”平成27年” からずっと増加し続けているわけです(もちろん、令和8年も増加を続けるか減少に転じるかは分かりませんけど)。ただし、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合が「36.5%」であることについて、まだまだ高いのではないかという意見があることには留意です。
【6】労働力人口について
🔽 2025年平均の労働力人口は「7004万人」と、前年に比べ47万人増加(3年連続の増加)
○ 「労働力人口」を男女別にみると、男性は3805万人と5万人の増加、女性は3200万人と43万人の増加
○ 「労働力人口比率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)」は「63.8%」と、0.5ポイントの上昇(5年連続の上昇)。
⇒男女別にみると、男性は71.7%と0.2ポイントの上昇、女性は56.4%と0.8ポイントの上昇
[注] 「労働力人口比率」は「労働力率」とも呼び、労働経済を語る上で重要な指標です。
※ 今回、メディアが最も強調していたのが「労働力人口」であり、「初めて7000万人を突破した!」などと報道していました(7000万人を突破したことそのものは覚えておいて絶対に損はありません)。しかし、「労働力人口」とは、「就業者」と「完全失業者」を合わせたものをいい、15歳以上人口のうち労働力人口以外の者を「非労働力人口」といいます。
労働力人口には「完全失業者」も含まれます。
したがって、たとえ就業者の数に変化がないとしても、完全失業者の数が増加すれば「労働力人口」は増加するわけです。ただし、今回の結果では、前年(令和6年)に比べ完全失業者の数に変化はなく、就業者数が増加したので、結果的に「労働力人口」が増加しました。
メディア報道等において、人手不足であることを強調するためか、「労働人口は減少しつつある」などと、少なくとも労働力調査には存在しない「労働人口」などという用語を勝手に作り出しているものも見られますが、まことに見苦しいです。
※ 報道記事を読んでいて気づいたのですが、もしかして、労働力人口が減少しているとの勘違いは…
「人手不足 ⇒ 労働力不足」という言葉の変遷に由来しているのではないかという気がしてきました。
「人手不足」とは、あくまで経営者(使用者)の立場で言及する言葉ですから、労働者の立場において職が有り余っているかどうかは別問題です。
人手不足の背景には、労働者と職のマッチング、労働条件、労働者の労働時間の変化、労働者の性別・年齢等の構造、産業別・地域別の就業者の偏り、経営者(使用者)の技術革新の問題などがあるのではないでしょうか。
■ 少なくとも現時点の日本においては、総人口、15歳以上人口、生産年齢人口(15~64歳人口)はすべて減少しています。しかし、「人手不足」とは言われながらも、男女計でみた場合に、労働力人口、就業者、雇用者はすべて増加しており、次に述べる「非労働力人口」は減少しています。
【7】非労働力人口について
🔽 2025年平均の非労働力人口は「3962万人」と、前年に比べ69万人減少(5年連続の減少)
○ 「非労働力人口」を男女別にみると、男性は1496万人と14万人の減少、女性は2466万人と55万人の減少
※ 非労働力人口とは、15歳以上人口のうち、就業者でも完全失業者でもない人口、つまり、仕事をしておらず、仕事をする意欲もない人をいいます。大学生はアルバイトをしていることがありますから一概には言えませんが、高校生は一般に「非労働力人口」に含まれますね。
なお、老婆心ながら、「労働力人口(7004万人)」と「非労働力人口(3962万人)」を合計すれば、令和7年平均の「15歳以上人口(1億966万人)」になります。
≪補遺≫
今回、2026年(令和8年)1月30日に公表された労働力調査は「2025年(令和7年)平均結果の要約」という調査結果を ”数値化” した「基本集計」です。
これに対して、非正規雇用を選んだ理由、失業した理由など調査結果を ”言語化” した「詳細集計」については「2025年(令和7年)平均結果の概要」として、2026年(令和8年)3月31日に公表される予定です。
さて、令和8年(2026年)も2月に入りました。暦の上では大寒(1月20日頃)あたりが1年のうちで一番寒い「冬の底」とされていますが、実際の平年値では、多くの都市で大寒を少し過ぎてからピーク入りしています。まだまだ寒い日は続きますが、立春を過ぎた頃から徐々に平均気温も上がっていきますよ♨️☀️
ですから…
受験勉強のペースも、徐々に上げていきましょう‼️
