統一地方選後半戦が終わり、この時期、市町村議会は、新人議員の引き合い、新たな会派の結成、会派統廃合など、

裏側では活発な動きを見せている。

市町村議会においては、同じ政党に所属する議員のみで、会派を構成するのは、共産党や公明党ぐらいだろう。

 

統一地方選を政党だけで選んで投票する危うさ

 

でも指摘した通り、市町村議会は政党ではなく、様々な立場にある議員で構成される会派で意思決定が行われることは、ご承知の通りである。

では、市町村議会における会派の重要性や、議会運営における影響力について、私の所属する藤沢市議会を例にして説明する。

他自治体議会に必ずしもあてはまらないことがあると前置きしておく。

 

まず、藤沢市議会における会派は「非交渉会派」と「交渉会派」に分類される。

 

非交渉会派とは、3人未満で構成される会派を指す。

交渉会派とは、3人以上で構成される会派を指す。

 

では、非交渉会派と交渉会派の違いは人数だけの呼称なのかというと、そうではない。

議会における活動領域と権限に大きな違いがある。

 

ちなみに、私は、6年間は2人で構成される非交渉会派に所属し、1年間は3人会派、さらに1年間は9人の最大会派に所属してきたため、どちらの立場も経験している。

 

話を戻す。

 

では、その違いの特徴的な大きな点を説明しよう。

 

議会運営委員会 に委員を出せない。

議会の運営全般について大きな影響力を持つ議会運営委員会では、会派1/3の委員を選任できる。

3人会派は1人、6人会派は2人、9人会派は3人というように、大きな会派ほど委員数が多く、委員会における影響力が強くなる。

非交渉会派は、議会運営委員会には準委員として参加できるが、採決権はない。

そして、準委員の発言内容は主に意見としての取り扱いがおこなわれる。

簡単に言えば、非交渉会派は議会運営に対する影響力はないに等しいとも言える。

議会改革検討会やICT小委員会など、議会改革全般に関わる会議体についても、非交渉会派は参加できないことを捕捉する。

 

予算委員会・決算委員会に参加ができない。

これはかなり大きな意味を持つ。

藤沢市議会は、非交渉会派でも2人会派であれば、予算委員会には1人の委員を選任できる。

しかし、1人会派である場合、予算委員会どころか、決算委員会にも参加することができない。

そして、当然ながら委員会における審査だけでなく採決にも参加できない。

本会議で決められた回数の中で予算決算議案に対する質疑をするしかない。

市の予算と決算を取り扱う委員会に関わることができないというのは、議員の権限や守備範囲として、かなり痛いと言える。

 

会派代表質問・会派代表討論の持ち時間が少ない。

会派で行う代表質問や討論は、会派所属委員1人あたり10分を加算するなど、時間の割り振りが決まっている。

当然ながら、非交渉会派の持ち時間は少なく、市側に伝えるべき要望や意見を削って時間内に収める必要がある。

 

全ての常任委員会に会派の委員を選任することができない。

藤沢市議会の常任委員会は5つ。子ども文教、建設経済、厚生環境、総務、補正予算に分類されており、それぞれ審査する所管が変わる。常任委員会には1つだけ所属することができる。複数の常任委員会に1人の議員が所属することは認められない。

よって、全ての常任委員会に所属会派の委員が1人以上いるのが望ましい。

その理由は、自分の質疑や意見要望についても、該当する常任委員会に所属する会派委員に託し、代弁してもらうことができる。

少数会派では、それができないため、所管する案件が限定されるといってもいだろう。

 

各派代表者会議に参加は基本認められない。

各派代表者会議は、議会や行政に関わる様々な案件を協議する非公開の各会派の代表者により構成される会議体。

非交渉会派は、この会議体に出席することはできない。(案件により召集されることはある)

 

各派交渉会ではオブザーバーとしての参加となる。

各派交渉会は、各会派議員の所属する委員会や役職について交渉し合う協議体であり、交渉会派は各議員の希望を示し、交渉できる。しかし、少数会派は、希望を示すことはできるが、交渉権は無い。よって、希望する委員会に所属することはできない。

また、少数会派は委員長になることはできない。

 

まだまだ、他にも違いはあるのだが、ざっと書いただけでも、こんなにも発言・議会活動・影響・情報量などの範囲に違いがあることはご理解いただけたと思う。「1人会派では仕事ができない」と言われる所以は個人の能力云々ではなく、議会内でのこうした権限の違いにある。

私が少数会派であった時は、議会会派制度について疑問を持っていた。議員一人一人は同じ権限と守備範囲であるべきだと。

しかし、議会運営においてのみならず、物事を前に進めるために重要なのは、協調です。

 

政策の近い議員と会派を組む努力をし、政治的に政策を進める努力に務めることは、自ら掲げた政策実現を目指す政治に必要な手法であるといえます。