1 丹波入り *秋旅・城旅・丹波旅*





山あいをしばらくひた走り、色づく丹波の森の美しさに見とれていると、一軒の古民家に到着。




ところどころに手づくりの跡が残る、なんとも味わい深い造りのお蕎麦やさん。
古民家を改装されたお店は、"蕎麦の家"で「そばんち」さんとおっしゃるそう。




建物のすぐ前はとてもきれいな水がなみなみ流れる水路。
これですよ、これ。



昨年の旅行で丹波焼にちなんだ場所へ行ったときにも思いましたが、たわわに流れる清水。
これがやっぱりどこにも負けない丹波の財産で誇りではないかな。
水がもたらす食文化、伝統工芸、交流・・・
水がきれいであれば米も酒も魚も獣も野菜も、すべてがおいしく健やかに豊富に育ちます。




靴を脱いで「お邪魔しまぁす♪」と思わず口に出るのは、まるで田舎のおばあちゃんちに帰ってきたかのような古民家のよさ。
丹波焼や地元の作家さんたちの作品がずらっとお迎えしてくれるので、そばんちさんがここに根ざした地域コミュニティの一員を担っているのだとわかります。




窓からの風景は手入れされた庭といまどき見ない電信柱が続くあぜ道と田んぼ。
風景もおかず! そんなそば屋さんです。




店主の佐藤さんは東北のご出身。
丹波に移住し定年後にお蕎麦やを起業されたお父さんで、職人さんによくある頑固で譲らない怖いお父さんを想像していたら全然ちがいます。
笑顔で気さく、お話をうかがうと普通に企業勤めをされていて、蕎麦の腕はまったくの素人でこの世界に飛び込んだのだとか・・・Σ(・ω・ノ)ノ!!
そんな、夢いっぱいで一種チャレンジャーなお父さん。
石臼で挽かれた自家製粉を使い、誰かのもとで修行はせずに自己流で打つお蕎麦は、日々出来上がりの変化があり、いまだ思考錯誤しながら独自のおいしさを追求してらっしゃるようすを語らいました。




この日予約しておいていたのは、

    お任せそば膳コース 2,000円


そば3種とだし巻きのコースです。




しばらくして、一膳めキター!




まず、加子母の伊勢神宮にも使われる木曽ひのきの森に行って、森林の大切さを学んだ私は
"木曽ひのき"の箸に興奮w
持つとしっくり馴染んで、そばを冷やさない温度で口まで運んでくれるから安心(^人^)




つき出しの<揚げそば>

細いときもあればこんなふうに平打ち麺のときも。

香ばしくてポリポリおつまみのよう!




<磯の香り(温)>


お椀に半分ほど入った温かいそばには、ほたてとたっぷりなふ海苔。




思ったより固めなそばに、しゃきしゃきしたふ海苔の食感、海鮮の沁みただしがおいしくてすぐ完食!




<だし巻き>

平飼い鶏の有精卵を使ってあり栄養たっぷり。
黄身の色が鮮やかで、やさしい味付けです。
添えられた山椒入りのそば味噌をつけて、いただきましたよ^^



続いてきたのが、<辛味大根ぶっかけそば>


お店では「あじさいそば」とも呼ばれる話題のおそば!!
冷たいそばに、紫大根の紫と緑の鮮やかな大根おろしがポンポンと3つ小山のように置かれています。  




そのうちの一つ、紫のおろしに酸味の効いただしをかけると、一瞬で鮮やかなピンクに咲き誇るの!!




ピンク、紫、緑の三色おろしに変化・・・その様子はなんとも芸術的! 
「佐藤さん、画家さん?!」なんて質問しちゃったほど素敵なアイデア。
アートだなぁ~
辛味大根の自然の辛さとさわやかなそばつゆ。
口当たりさっぱりで、新感覚なおそばです。




<そば掻き>

もちもちゴロゴロの食感のそば掻きは初めて食べますが、そばでできたお餅みたいで懐かしさを感じます。




まずそのままで味わったあとは、醤油の甘だれで二度おいしい。
ココまで食べてきて 「なんだろう、ここのお蕎麦は何か違う」 と、はっきり思いながら食べ進んできて、そして次に運ばれてきたもので、私の常識はひっくり返されました・・・(゚Д゚)





<水そば>




粗挽きのそばがただ数本、水の中に浮いている。それだけのメニュー。
でも噛むごとに、カプセルが弾けるように元気なそばの味が口の中に広がる。
そのそばの存在感が凄い!!

入ってるのはただの水、それだけにそば本来の生命力が、そのコシのある麺からダイレクトに口の中に感じられるのです。

とにかく初めての経験、
初めての味、
初めての噛み心地。

こんなお蕎麦は食べたことがない!

いつもの蕎麦じゃない、どこにも似ていない。
こんなお蕎麦、初めて・・・・・。


かなりの衝撃で箸を持つ手が止まった私の背中から、
「っほんま、おいしいわー
 ちょっと遠かったけど、また来た甲斐あったわー!」
という関西弁が聞こえてきたんですが。

え? それくらいなもの?
私の中のそばの常識をくつがえしたそばんち
しょっちゅう食べてる人ってなんて贅沢なの~!?そう思ってしまったお隣の席・・・



<粗・盛りそば>

うなっている私の前にとどめのように届いたのが、そば打ち直前に、そば粉を石臼で摺るというこの粗挽き十割そば。
スタンダードなそばに見えて、そんな単純なものではない。




つなぎに小麦粉を使わず白く透き通るような透明感、





その中に肉眼でも見える、ぷつぷつと宿るそばのつぶ。




ぷちっと弾けてそばの味を色濃くリフレインするのだから、出されたつゆではなく、お父さんイチオシの小皿の藻塩ですべていただきました!
噛むたびに広がるこのそばの風味・・・引き立つ甘み・・・たまりません( ´艸`)。
そば好きならこの食味に酔うでしょう! 何度も噛み締めるでしょう!
普通これだけそばがつづくと、正直「またそば?」っていう感覚になると思いがちだけど、そばんちさんのそばは違った。
すべてが違うこしらえで、味わいで・・・

いわば 「そばんちさんのお蕎麦は生きている」

お父さんの研究心なのかなぁ。湿り気の土のおかげなのかなぁ。水のおかげなのかなぁ。
丹波は土から水蒸気がむんむん上がってくる場所。
朝なんて霧で道路が見えないほど、雲海が広がるほど。
丹波の土が生きているから、きっとそばの実もそばも生きているし、丹波自体が生きている。


 



「水がいいからそばも米もお酒もおいしいでしょうね。丹波杜氏の酒造に行きたいな~」と言う会話を聞いた佐藤さんが、近くの山名酒蔵の"奥丹波・木札"をそっと出して下さった。
キャホ――(´∀`)――!!
飲みやすくフルーティーな果実を思わせる凜とした飲み口、遠くで樹木の芳しい香りもほのかにする極上のしぼりたて。
うーん、うまーい!!




帰ろうとしてもらった箸置きも手づくりだってばよ!




いろいろ衝撃だった佐藤さんのそばんちSRIRITS。それが、丹波の水のように脈々と受け継がれ、姉妹店がこんなに点在するのだそうです。

型にとらわれず自由にそばを愛す。
帰ってきてずいぶん経った今でもその味を懐かしく思い出しますよ。すぐにでも食べに行きたいくらい。
うん、やっぱり、そばは生きているんです。
それもそのはず、水が生き、そば粉が生き、打つ手のひらが生きているんですから。
生き生きとそばを打ち茹でるお父さんですが、ブログを拝見したら最近入院なさったそうで、イチゲンさんの私すら娘のようにこうして心配してしまう、そのホームな味とたたずまい。
魔法にかかる、奥丹波の蕎麦屋さんです。



そばんち




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丹波市市島町梶原125
0795-78-9505
営業時間・要確認






城たびたび城たびin兵庫
城丹波市公式観光情報サイト





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そばんちそば(蕎麦) / 市島駅
昼総合点★★★★ 4.0