入居してわずか一ヶ月で入居者が亡くなった。

自ら、とのこと。

どこで亡くなったかは情報は入ってこない。

 

私が内見の案内をした。

明るくチャラそうに見えて、礼儀正しく、好青年に思えた。

悩んでいる様子も見せてはいない。

ただ、奥さんとは仲が良くないので部屋を探している、

家業の借金があるので保証会社の審査が通るのか心配、

と言っていた。

 

お部屋探しに来る人は、

結婚して家族になろうとする人と、

独立や離婚で家族から離れる人だ。

仲が良くないという言葉だけで、

自ら命を絶つことには結びつかない。

 

また借金がある人もいっぱいいるだろう。

保証会社の審査に通るか通らないかは、

その借金をちゃんと返しているかいないかだろう。

名のある企業にお勤めで年収もある人が

保証会社の審査に即落ちして驚くことも多々あるが、

彼はちゃんと審査に通った。

借金があるという言葉だけで、

自ら命を絶つことには結びつかない。

 

明るく見えて実は心の病気だったかどうか、

そんなことまではわからない。

離婚の話し合いがうまくいかなかったのか、

一人でさみしくなってしまったのか、

事業の先行きが不安になってしまったのか、

何が彼にあったのだろう。

 

強いて言うなら、

奥さんとは仲が良くないという言い方に優しさを感じた。

また借金があるから審査の心配には真面目さを感じた。

優しさや真面目さは人を追い詰めることがある。

 

 

たかだか物件の案内に行っただけの人に

そんなに思い入れなんてないはずだが、

内見は限られた人数で、少しずつ家庭の事情も話す人もいて、

意外と距離が近くなった気分になったりもする。

 

確かに彼はあの時生きている人だった。

動いていて、話していて、笑ったり、考えたり、していた。

 

あの時、

自分の最期の場所を探していたのではないことを

切に願う。